「みすてないでください」おれたちの夜間中学がなくなる!

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   この日のクローズアップ現代は「学校」がテーマとあって、スタジオは学校机と椅子で埋め尽くされた。そのなかに立つ国谷裕子キャスターも黒縁メガネに地味なチェックのジャケット、黄土色のロングスカートといった出で立ち、いつもよりどことなく教師風である。

   「学校」といっても、いわゆるフツーの学校と違ってあまり知られていない、いわゆる夜間中学のハナシである。現在は全国に公立35校 民間29校があるという。1993年には、西田敏行主演、山田洋次監督の映画「学校」で取り上げられた。

   そこに通うのは、戦後の混乱、貧困などで、義務教育を受けられなかった人、外国から来た人、いじめなどにあって不登校になり、カタチばかりの卒業証書をもらったが、高校進学などを目指して再勉強するといった人たちだという。

   北九州市の「青春学校」に通う86歳の女性は、6年前にこの学校に通いはじめるまで、基本的な読み書きもできなかったという。家庭の事情で、小さい頃から奉公に出ざるをえず、学校に通えなかったからだ。1人では預金を引き出すことも病院の薬を受け取ることもできない。「街に出ても駅の名前とか、どこ行きかなどがわからない。人中に出たくなかった」と言う。

   いまでは「学校」で読み書きを学び、ボランティアの教師と日記を交換する。「若い人のおかげ、青春学校のおかげやろうね」「いまが一番幸せと思う」と、女性は笑顔を見せた。この女性のように義務教育を受けられなかった60歳以上の人は15万人いるという。

公的援助、寄付減り存続の危機

   一方、こうした夜間中学も、日本国の御多分にもれず、厳しい状況にあるという。公立では教室の提供、給食、通学費といった公的な援助が減らされる傾向にあり、私立では寄付が減るなどして、存続が危ぶまれるケースがあるんだとか。

   映画「学校」で西田が演じた教師のモデル(のひとり)となった熱心な元夜間中学教師、松崎運之助さんは「学ぶっていうことは生きることだと思う。学ぶ機会をなくした、あるいは制度からはじきだされた人たちに、ちゃんと基礎教育を保障していくことをやらないといけない」と話す。

   彼のもとには、このままでは「学校」に通えなくなるといった不安を訴える生徒からの手紙が目立って来るようになったという。そのなかの一通は、「おれたちをみすてないでください。やっとたどりついた夜間中学をなくさないでください」と、平仮名メインで切実な思いを綴っていた。

ボンド柳生

*NHKクローズアップ現代(2011年2月15日放送「学ぶことは、生きること~夜間中学の現場から~」)

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