<愛する人> 『彼女を見ればわかること』『美しい人』のロドリゴ・ガルシア監督の最新作。原題は『Mother&Child』。『愛する人』という、なんとも漠然とした邦題をつけられたせいで、パッとしない印象になっているのがもったいない! さまざまな親子のあり方を丹念に描いた秀作だ。
許せるのか、許されるのか
ロサンゼルスに住むカレン(アネット・ベニング)は14歳の時に恋に落ち妊娠するが、母の反対にあって出産と同時に娘を養子に出す。それから37年後、51歳のカレンは老いた母と暮らしながら、いまも娘を手放したことを悔やみ続けていた。
一方、孤児として養子に出された娘・エリザベス(ナオミ・ワッツ)は敏腕弁護士となっていた。自立を重んじ、男に縛られたくないと結婚はしていない。
実の親子でありながら、会うこともなく生きてきた二人。しかし、エリザベスは予想外の妊娠をしたことで「母」を意識し始める。また、カレンも介護の末に母を看とり、より強く「娘」への思いを募らせていく。ある日、二人はそれぞれに、37年前に仲介役となった養子縁組施設に思いを込めた手紙を託すのだが…。
一方、カレンとエリザベスの展開をよそに、また別のストーリーが進む。ルーシー(ケリー・ワシントン)は子どもが産めない。そこで夫と合意のうえ、養子を迎えるために、かの養子縁組施設を訪ねていた。待っていたのは、望まぬ妊娠をしてしまった20歳の女性。ここでも母になりたいルーシーと、母になることを拒む女性との「母」と「子」をめぐる物語がある。
カレン、エリザベス、そしてルーシー、3人の女性たちのそれぞれの運命。カレンとエリザベスは果たして巡りあえるのか、そしてルーシーの人生がこの母娘の人生とどうリンクしていくのかが最大の見所だ。