メジャーリーグでも活躍した日本ハムファイターズ一軍投手コーチ、吉井理人が2011年2月9日のブログで、野茂英雄との思い出を語っている。
「ちょっと、オープン戦の思い出話を聞いてください」
その昔、吉井と野茂がフロリダのある球場で、オープン戦を投げ合ったことがある。3イニングだったが、結果はワンバウンド投球を繰り返す野茂よりも、吉井のできが非常によかった。相手は日本人メジャーリーガーの先駆けとなった大投手だ。吉井は有頂天となってしまい、記者たちの前でも、その活躍を誇ってしまった。
すると、近くにいた野茂は「今日は、フォークボール、全部ワンバウンドさせたった」と、あの無愛想な声でつぶやいているではないか。吉井はびっくり。その試合で野茂は、結果なんて気にせず今後の投球を考えながら、意識的な取り組みをしていたのだ。何も考えずに球を放っていた吉井とは、雲泥の差というわけだ。
「この時期のゲームは、相手をやっつけることより味方へのアピールのほうに重点を置きがちです」「しかし、本当の目標は1軍メンバーに残ることではなく、1軍で勝つことです」
自身が指導する若い選手たちにも、今の時期、結果を気にせず自分の実力をつけるための投球をしてほしい。反対に、自分たち首脳陣は結果にとらわれず、選手たちのピッチングの質を見極めなくてはいけない、と気を引き締めていた。