経営再建中の日本航空グループ。「倒産で皆が反省し、変わってきた」と稲盛和夫会長が自画自賛する裏で、内定取り消しが行われていたことが明らかになった。それも、会社側が引っ張りに引っ張って、正式に内定取り消しを通知したのは1年半後。「とくダネ!」がその経緯を取り上げた。
100万円で「お引き取りください」
内定取り消しがあったのは、JALグループ会社で、主に羽田空港と地方都市の空港を結ぶ路線を運行する「JALエクスプレス」。国立大大学院生の男性はパイロットになるのが夢で、2009年10月に訓練生として内定を受けた。
しかし、3か月後にJALは経営破綻。心配した男性に会社がメールで伝えてきたのは、「入社時期は12月以降にずれ込むが、採用に変更はない」だった。
そして2010年度入社式。「全員参加」という稲盛会長の意向で男性も参加した。ところが、いっこうに入社の話はなく、3か月後に状況が一変した。会社側は緊急説明会で、「パイロット訓練生として採用できるか非常に不透明になってきた。地上での雇用を検討中だ」というのだ。さらに、昨年10月になって、「パイロットとしての採用はない」として、次の3つの選択肢を提示してきた。
「採用枠のあるJALグループへの就業」
「一時金90万円プラス支援金10万円」
「一時金90万円プラス転職支援プログラム」
26人の内定者のうち20人がこの選択肢に同意したが、男性ら6人は同意しなかった。結局、昨年12月に会社側から男性らに「解約通知」、今年1月末に正式に内定取り消しがあったという。
男性は休学していた大学院に復学したが、「もうパイロットは目指しません」と言い、新たな道を模索している。
1年半も放ったらかし
やはりパイロットになることが夢で、09年に内定が決まり、1月末に内定取り消しの通知を受けた男性も悲惨だ。国立大学を昨年3月卒業、1年半も同社のあいまいな対応に引っ張られたあげく、「新卒」の就職条件を失った。男性は「切るなら切るで早めに決断してもらいたかった。今の就職状況では新卒じゃないと厳しい。頭の中が真っ白です」と嘆く。
スタジオでは、キャスターの小倉智昭「この話を経営者が聞いたら胸が痛むだろうね。難関を突破したのにかわいそう」
慶応大学教授の福田和也はJALを厳しく批判する。
「内定取り消しまで1年半もかかったのは学生に気の毒。この時期、1年半は学生にとって致命的になりかねない。JALのガバナンスですよ。再生といわれるまでになっていますが、以前と体質は変わっていないと思いますね」
学生側に立って考えるというよりも、親方日の丸時代のJAL の体質がそのまま残っていて、採用する側の都合だけを優先しているように見える。