「カメラさん、そっちじゃない、そっちじゃない」
「カメラさん、右下だな」
「まだ、ちゃんと捉えていないんですよ。いまどこなんですか」
司会の加藤浩次が苛立って叫ぶ。プロ野球・北海道日本ハムファイターズのキャンプ初日、沖縄・名護市営球場。グラウンドに現れたはずの斎藤佑樹の姿がテレビ画面に写らない。大勢の報道陣で殺気立つ中、目と鼻の先にいるスーパールーキーの姿をカメラが捉えることができないのだ。大変な騒ぎである。
キャスターのテリー伊藤が何度も言う。
「新人のキャンプでこんなのは初めて」
市役所も臨時駐車場やシャトルバス
球場では、レポーターの中山美香がファイターズの新しいユニフォームを着て加熱ぶりを伝える。昨日(2011年1月31日)の那覇空港。1100人が祐ちゃんを迎えた。
加藤「えっ、1100人? サッカーの優勝チームが凱旋しても500人だったのに」
空港は人、人、人で、中山も斎藤を見ることができなかったほどだ。地元は街上げての歓迎。たくさんの佑ちゃん商品を用意した。パン屋にはゆうちゃんメロンパン、ケーキ屋にはサイトーロール、食堂にはハンカチそば、さいとうユッケ、ザリガニ釣りにもハンカチを巻いたザリガニハンカチゆうちゃんなるものまで登場。市役所も臨時駐車所を用意したり、無料シャトルバスを走らせたり。
コメンテーターの渡邊美樹(ワタミCEO)「経済効果15億円といわれていますが、ザリガニを入れると20億、30億円いきますよ」
こうしたフィバーの中、テリー伊藤が画面の斎藤を見ながら気遣う。
「ああして、笑顔をしていますが、心の中は自分の実力がプロにどこまで通用するか不安だと思いますよ」
キャンプが始まったばかりだ。一時のブームに浮かれるような選手ではないだろうが、外野の騒ぎに惑わされることなく地道に力をつけてほしい。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト