無差別連続殺傷事件から2年7か月。東京・秋葉原の歩行者天国(ホコ天)が1月23日(2011年)に試験的に再開された。秋葉原は電気街、クールジャパンを代表する観光地、若者のたまり場、IT企業のオフィス街、行政、昔からの商店街など、様々な顔を持つ。「クローズアップ現代」がホコ天再開までを追った。
写真ダメ、ちらしダメ、立ち止まるな
最初に紹介されたのは地元商店街・アキバ21の歩行者天国再開に向けた会議の様子。自らの手で歩行者天国の安心・安全を守るための自主ルールが議論された。出された結論は、路上での物品販売や自転車の乗り入れ、チラシ・ティッシュ配布などの禁止。パフォーマンスをどうするのかについても話し合われ、これも禁止となったが、パフォーマンスを禁止するなら、電気店の公道で客の呼び込みも自粛させるべきだとなった。
午後1時から始まったホコ天には、警察官や警備員、住民のパトロールなど230人が出動し、コスプレ姿の女性を撮影しているのを制止したり、チラシ配りをしていた若者を排除していく。パフォーマーの「これは少しやりすぎではないか」という声に対し、電気街振興会会長は「ホコ天を再開したばかりなので、ある程度の規制はやむを得ない」話す。
なにか変だという違和感ばかり
ドキュメンタリー作家の森達也も異様さを感じた1人だ。
「当日、僕も現場に行きました。でも、何か変だという違和感があった。立ち止まっていると、歩いてくださいという声が掛かった。秋葉原のホコ天とは何か、もう一度考える必要があるではないかと思う」
キャスターの国谷裕子は「殺傷事件の後、高い規制の壁がいくつもあったと聞いている。それを一つ一つクリアしてきたので、これほどの時間が掛かったと思われる」と解説する。森はさらの疑問を投げかける。
「安心・安全は錦の御旗。ホコ天での様々な行為がどこまでが合法で、どこから違法になるのか法律的にもはっきりしてない」
地元が秋葉原をどんな街にしたいのかよくわからなかったが、規制を強化すれば安全・安心の街になるのか。「ここは広場ではありません。道路です。立ち止まらないでください」というのでは、「歩行者のための天国」とは言えまい。何のための車道解放なのだろう。
今回の再開は6月までの限定だが、6月を待たず急速に客足が遠のき、街が寂れそうな再開初日の様子であった。
(クローズアップ現代1月27日放送「秋葉原の一番長い日 ~ホコ天再開ドキュメント~」