イギリス人の英会話講師リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)が遺体でみつかった事件で、殺人罪などで起訴された市橋達也被告(32)が2年7か月にわたる逃亡生活を手記にまとめた。タイトルは「逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録」(幻冬舎)。沖縄の離れ小島でヘビを食べるなど潜伏生活の様子が初めて明らかになった。これまで詳しい供述をしてこなかったといわれる市橋が、こうした手記を発表する意図は何なのか。「とくダネ!」は背景を探った。
裁判員裁判の情状酌量を計算
事件が起きたのは2007年3月26日。事件発生後、千葉県市川市の自宅マンションからTシャツにジーンズ、裸足で逃走した市橋。逮捕は時間の問題と見られたが、捜査の網をくぐり、逃亡の足取りは青森から沖縄まで全国20都府県に及んだ。その間、よく知られているように顔の整形手術を受けていたが、途中、自分でも針やハサミで鼻や唇の形を変えたというから凄まじい。
四国では遍路にもなった。そして、インターネットや図書館で調べたという沖縄・久米島沖のオーハ島に向かった。地元の老人が1人暮らしているという小さな島だ。そこにあるコンクリート小屋が隠れ家。カニやウニ、ときにはヘビまで食料にしたという。
レポーターの大村正樹は「2時間で読んだが、なぜ事件が起きたのか、リンゼイさんと何があったのか、肝心なことはいっさい書いてない。読み物としては興味深いが、書いた狙いが分からない」と疑問を述べる。
司会の小倉智昭も「リンゼイさんに生き返ってほしいと願ったりしている。どこに本心があるのか」
公判の日程は未定だが、裁判員裁判で行われる予定だ。コメンテーターの竹田圭吾(ニューズウイーク日本版編集主幹)があっさり言う。
「情状酌量の材料になるとの思惑があるのでしょう。今の段階で償おうというのは身勝手すぎる。裁判員は影響を受けないで裁いてほしい」