週刊誌を読むシチュエーションで、今いちばん気に入っているのが、私が教えている大学のすぐ近くにある居酒屋「高木」(北区滝野川)で、煮込みと焼きトンを肴に、焼酎のミルク割りをチビチビやりながらというやつである。
こういうときは小難しい特集よりも2ページぐらいの連載コラムが酒に合う。小林信彦の「本音を申せば」(週刊文春)、「立川談志の時事放談」(週刊現代)、嵐山光三郎の「コンセント抜いたか」(週刊朝日)、福田和也の「世間の値打ち」(週刊新潮)、「中野翠の「満月雑記帳」(サンデー毎日)が私の好みだ。そうそう、競馬好きとしては牧太郎の「青い空 白い雲」(サンデー毎日)もはずせない。
金太郎飴記事にウダウダ呟きながら「お代わり!」
読みながら呑みながら、酒が少しずつ理性を麻痺させ始めた頃から、各誌の小沢(一郎)ものを読み始める。なぜなら、このところ溢れている小沢一郎待望論のような記事にややウンザリしているからだ。
朝日は「小沢がやれば日本はこうなる」で、景気対策や財源問題も小沢流の強力な政治主導でやれるとし、日米同盟については「ユーストリーム」で語ったこんな言葉を紹介している。
「僕は日米同盟なんて、同盟関係じゃないと思っている。同盟っていうのは対等な国と国との関係であって、日米同盟なんて存在しない」
この言はよしだが、小沢が政権を取っていたら、菅内閣よりも数段いい政治が行われていたはずだという無邪気な推論には、首を傾げざるをえない。
悪のりして「AERA」までが、政治資金規正法違反に問われている石川知裕議員(小沢の元秘書)を担ぎ出し、小沢と原敬を重ね合わせ、原が多くの政治資金を集めて配ったのは、「政党政治を強くするためには資金力が必要だった」からで、同じように小沢も「09年の総選挙前に重点区の候補者にカネを配って、それが『金権政治』だと批判されましたが、選挙で勝って、議員を強くして、政党を強くしないと官僚政治と対峙できないと思っていた」からだと小沢の代弁をさせている。
今度の内閣改造も、文春のタイトル通り「嗚呼、パッとしない菅『ドロ船改造』浮上せず」だが、「空き菅」とまで揶揄される菅首相バッシングのために、1誌、2誌ではなく、挙って小沢を持ち上げるのでは、週刊誌の存在理由である多様な見方を読者に提供することからはずれるのではないか。
このところの政局ものは、金太郎飴のごとく、どこも切り口が同じで読み応えがないなどとウダウダ呟きながら、ミルク割りのお代わりを注文する。
ポストを読み進めると、驚いた記事に遭遇。酒で朦朧として読み間違えたのかと見直すが、そうではなかった。件の記事は「4月、日本経済は劇的回復を遂げる」で、その根拠の第1に、再選を目指すオバマ大統領が今年、イラン、北朝鮮という「火薬庫」に火を付けるからだというのだからたまげた。
「これが日本経済の刺激になることはいうまでもないだろう。1950年の朝鮮戦争では、戦争物資の注文が殺到する『朝鮮特需』が起き、焼け野原だった日本が急回復を遂げる契機となった」(ポスト)
戦争、しかも北朝鮮とアメリカが戦争すれば、日本が無傷でいられないことぐらい小学生でもわかる。そうまでしなければ回復できない景気なら、しなくて結構だ。
最後の一杯で見つけた「野村克也×二宮清純」対談
今週は小沢ものだけではなく、重なっている企画が多い。現代とポストがグラビアで「春画」の大特集(ここまで見せたらやることなくなっちゃうんじゃないかとブツブツ)。
「文藝春秋」(1月号)で慶應義塾大学医学部講師・近藤誠医師が寄せた「抗がん剤は効かない」が話題を呼び、文春は先週号で専門医たちの反論を掲載、現代も「抗がん剤治療は本当にダメなのか」をやっている。今週の文春は、近藤医師から申し込まれたのかもしれないが、彼の反論を載せている(難しくて何をいっているかわからない)。
文春と新潮は、東宮で2年間に5人の側近たちが去っていった「異変」を追いかけている。両誌によれば、昨年暮れに愛子さまの養育専任女官の小山久子さんが退職し、年明けにトップに位置する木幡清子東宮女官長が退任してしまった。それ以外にも、2009年に警察官僚出身の末綱隆東宮侍従長が退任するなど、次々に去っていっているというのだ。
なぜなのか? 木幡さんが退任した裏には「雅子さまとの『軋轢』を抱えていたのだという」(新潮)。また、こうした事態は「いずれにしても役所という組織からすれば尋常でない事態。やはり両陛下と東宮職がうまくいっていない表れなのでしょう」(元宮内庁職員山下晋司氏・新潮)
文春はこうした退任が続く理由を宮内庁関係者にこう語らせている。
「小山さんも木幡さんも退任したのは、雅子妃の御病気と無関係ではないでしょう。いまの東宮御所は愛子さまのことにかかりきりで、ご公務もほとんどない。お仕えする女官としても、居場所がなくなったと感じたのではないでしょうか」
雅子妃の病気が長引く中で、子育て、天皇家との関係など、様々な問題が起きつつあるようだ。
最後のミルク割りを頼んで読み始めたら、意外(失礼!)におもしろかったのが「野村克也×二宮清純 野球は考えたものが勝つ」(現代)だった。なかでも注目の斎藤佑樹のことを野村は、「教えることがあるとすれば、あとは相手バッターの攻略法だけでしょう。僕からすれば、あんなおもしろいピッチャーはいないね。生かすも殺すもキャッチャー次第というタイプだから」と太鼓判を押し、自分がマスクを被っていたら二桁勝たせられるといっている。
去年、大きな期待をもって迎えられた菊池雄星は1年間2軍暮らしだった。斎藤も話題になるのは開幕までにならないように頑張れ。そう呟きながら、ほろ酔いで店を後にしたが、オー寒。湯豆腐やいのちのはてのうすあかり(久保田万太郎)。湯豆腐でも食って寝るか。