今が旬の寒ブリが豊漁という。なかでも極上なのが富山県氷見沖で獲れる氷見寒ブリ。ところが、このブランドを揺るがせかねない事態が浮上している。
東京・築地市場に昨年末(2010年)に入荷した氷見寒ブリの一部に、産地偽装の疑いがある魚が含まれていたというのだ。
地元では娘の嫁ぎ先へのお歳暮に贈るのが習わしという氷見寒ブリは、ほかの寒ブリとどこがどう違うのか。まずこの点から…。
ブリは五島列島沖で産卵を終えて日本海を北上し、北海道周辺で豊富な餌をたっぷり食べて栄養を蓄えた後また産卵場所を求めて南下する。南下を能登半島に阻まれ、富山湾の氷見沖で回遊しているところを定置網で捕獲されたのが氷見寒ブリだ。冬の日本海はシケで漁が難しいが、能登半島のおかげで波もさほど荒くなく漁がしやすいという。
昔から氷見寒ブリは極上ものとして有名だった。加えて、最近は保存技術の向上が加わった。「スパモニ」が紹介したのは『沖じめ』という技術。定置網で獲れたブリは船の生簀に入れる。海水が入った生簀に微妙な割合で砕いた氷を入れ、零度近くのシャーベット状にしておくと、投げ込まれたブリは瞬時に仮死状態になり、うま味が凝縮されるという。
「氷見のブリは口に入れた時の甘みが特徴。何回食べてもくどくない。これが天然のブリの脂の乗り具合だ」
「獲れたてのブリは、生まれたてのあかちゃんを抱っこしたときのようにホチャホチャした感覚」地元の市場で働く人たちは口をそろえて味自慢する。
秋までに「ひみ寒ブリ」登録
その極上ブリに産地偽装の疑いが浮上した。当然、放っておけないはずだが、豊漁にわいているためか、地元の反応は比較的鷹揚だ。灘浦定置漁業組合の濱元英一組合長は次のように言う。
「偽装した人がいるらしい。市場の外でやっているので僕らにはまったく分からない。ただ、氷見ブランドということで国民が目覚めてくれたのではないか。かえってよかったと思っている」
ということで具体的な対応は今年秋から。秋までに『ひみ寒ブリ』という名称で地域団体商標登録を行うという話に、若一光司(作家)は「これだけ有名なのに、今までやってこなかったのは意外ですね」
スタジオには、1匹2万円以上する氷見寒ブリが登場。コメンテーターに刺身が配られ、鳥越俊太郎(ジャーナリスト)が「脂がのってこれは美味い」と舌つづみ。