画面に映しだされた見出しには「現代の魔女狩り!? 所得税課税に魔女は呪いで対抗」の文字。司会の赤江珠緒アナが「いったい何のことでしょうか」と問う。
若一光司(作家)の「世界びっくりニュースウオッチ」コーナー、今回はルーマニアに現存する呪術を行う魔女の話だ。
ルーマニアで1月1日から施行された「新労働法」で、これまで職業とみなされなかったモデルや執事、占い師、魔女たちも正式な職業(専門サービス業)とされることになった。
財政危機に陥っているル―マニア政府の窮余の策だが、その結果、収入の申告が義務付けられ、16%の所得税が課せられることになった。
中世ヨーロッパの「魔女狩り」は有名だが、その魔女が現存していて、課税のために公認されたというのも驚き。若一の説明によると、ルーマニアには民間信仰の一部として今も魔女が残っており、祈祷や呪詛、占い、病気治療を行っているという。
しかも、現実に呪いをかけられると半ば信じられていて、バセスク現大統領は特別な日には「魔女の呪い」を避けるため紫色を身につけるという。2010年のEUサミットでも紫色のネクタイを締めていた。
また、独裁者だったチャウシェスク元大統領はお抱えの魔女にいろいろ相談をしていたという説もある。
中世にタイムスリップしたような話だが、ルーマニアでは迷信と一笑に付せるわけにはいかない。1977年にチャウシェスク政権を呪いにかけた罪で投獄され、魔女の女王といわれるブラタラ・ブゼア(63)が、今回の課税に次のような凄みのあるコメントをしているからだ。
「私は国の大統領だって恐れません。私たちに何かしようとするなら魔力を見せますよ」
就職難でにわか魔女急増
大多数の魔女は課税に反対で、一斉に呪われたら政権はどうなるのだろう。そんな心配もありながら課税対象にしたのは、深刻な不況で職探しもままならない人が、魔術も知らないのに魔女を名乗るケースが急増しているという事情もあるという。さらに、インターネットを使って営業対象をEU域内に拡大している魔女も出没している。呪いの術をかけるのに必要な道具は、犬の排泄物と一握りの砂、そして黒コショウだけ。1回につき600円から2000円という。
小木逸平アナは「良心的な値段ですね」というが、ルーマニアの平均給料は月5万円なので決して安いとは言えないし、犬の糞で呪われてはかなわない。
なかには賛成派魔女もいて、「正式な職業として認められたことで、禁止されていたテレビ出演も可能でPRもできる」と歓迎している。