寒いダジャレのガハハおじさんで知られた演出家の和田勉さんが亡くなった。2008年に食道上皮がんが発覚、延命治療や手術は行わず闘病生活を続けていたが、14日(2011年1月)に川崎市内の老人福祉施設で死去。80歳だった。
NHKで数々のテレビドラマの名作を残した。その出演者たちの言葉。「阿修羅のごとく」(79年)に出演したいしだあゆみ。
「演出ではとても繊細で怖い方でした。怖かったから成長できた。本当に幸せな出会いでした」
八千草薫「大きな声と人柄で出演者を楽しく元気に引っ張ってくださる魅力的な演出家でした。とても残念です」
「けものみち」(82年)、「勇者は語らず」(83年)の名取裕子。
「厳しい演出を通し、女優として多くを教えていただいた。現場ではパワフルで情熱がみなぎっていました。一生思い出に残る素晴らしい方です」
「竜馬がゆく」(68年)の北大路欣也。
「稲妻のように激しく爆発するような情念で1年間引っ張ってくださった。『竜馬がゆく』は私の宝です」
「価格破壊」(77年)、「ザ・商社」(80年)の山崎努さんは手書きのメッセージで、「『演技の1回性』を大事にした独特の演出で、現場では基本的にNG、やり直しはなし。その時のエモーションを素早くカメラに写し取っていく。『早く、早く。急がなければ、腐ってしまう』というせりふが『価格破壊』にあって、今も時々思い出す。それが和田さんの生き方そのものだったのでしょう」
当の和田もテレビで語っていた。
「人間は10分後には何が起こるかわからない。台本がないから。役者は台本が人生だから最後を知ってる。最後から逆算すると、よくわかるけれどもちっとも面白くない。それを壊すことがドラマの演出なんです」
「仕事は慣れでやっちゃいけない」
妻のワダエミさんはアカデミー賞も受賞した世界的な衣装デザイナーだ。87年には夫婦でファッションショーもやったことがある。
そのときエミは「仕事場では主人という感じじゃない。だから…、そう何回もしたくはない。やっぱりくたびれる部分がある」と話していた。脇から和田が「仕事は慣れでやっちゃいけない。相手を知ってるからツーカーだと思ってやると失敗する。とにかく知らんぷりを基本にしてます」
バラエティーやCMのガハハおじさんは、仮の姿だったわけだ。
MCの加藤浩次「凄い作品を作っている人なのに、偉ぶらずにダジャレとばしていたイメージ」
キャスターのテリー伊藤は「NHKという枠にいたから、それを壊してやろうとしたと思う。NHKが和田さんを作ったんじゃないか」と言う。
東大教授のロバート・キャンベルは「仕事をしたあと、飛び出して書いたり発言したりするのはテリーさんがそうなんだけど、その先輩だと思う。欧米にはそういうのはいない」
テリーは「大先輩ですね」としんみり。