タイガーマスク現象がついに47都道府県に広がった。善意の運動は多くの人に歓迎されているが、「とくだね!」はこうした善意を受ける側の実情を取材した。レポーターの大村正樹が静岡市の児童養護施設「静岡ホーム」を訪ねた。
このホームには2歳から18歳まで77人の子どもたちが暮らしている。ここにも「伊達直人」の名前で7つのランドセルが届けられたが、今春入学する子どもたちのランドセルはすでに用意されていたという。毎年、地元の競輪選手から寄贈があるのだ。タイガーマスクからのランドセルは、これから入所してくる子どもたちのために大事に保管しておくという。
大塚隆雄園長はランドセルに感謝しながらも、児童施設として求めるとしたら何かと聞かれ、「わがままとはよくわかっていますが、運営費や人件費に苦労しているので、子どもたちが必要とする経費を実費でいただければ非常にありがたい」と打ち明ける。
「タイガーマスクにありがとうって言いたい」
食堂で夕ごはんを食べ終えた小学生に大村が聞く。
「タイガーマスク、知っている?」
子どもたちは大きな声で「知っている!」
「伊達直人さんがどんな人か知りたい?」
「はーい!」とみんな手を上げる。
「お礼が言いたいひとは?」
「はーい!」
これもみんな手を上げる。「ホームにいろんなものを送ってくれてありがとうって言いたい」
大塚園長は全国の「伊達直人」氏に「名前を名乗ってください」と呼びかける。
「子どもたちにお礼をいう機会を持たせてほしい。大人への不信感を持っている子どもが多い中、世の中にはこんな大人もいるということを子どもたちに分かってもらいたいのです」
社会心理学の専門家は「流行的な一時的現象で、今後急激に減少する」とみているが、司会の小倉智昭がいう。
「ブームで終わったら、来年入学する子どもたちが、去年の人たちはランドセルをもらえたのに僕らはもらえないといった逆に大人への不信感を与えることになりかねない」
これを機会に新しい寄付文化が根付けばいいが。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト