物足りない家族風景
一方、ザンネンだったのが、家族崩壊にいたるまでのいきさつや、最後はガンも発症した壮絶な闘病生活の描写がとてもライトだったことだ。ちょっとした涙や笑いをスパイス的には入れているものの、安行の入院生活と、退院後に家族4人で過ごしたひと時を、最後まで淡々と美しく穏やかに描く。だからこそ、この病気を知らない人でも引くことなく最後まで観られるのかもしれないが、観客の心をわしづかみにするようなリアリティーのあるシーンがストーリーのどこかにほしかったというのが正直な感想。ラストの情緒的な家族風景のシーンも、「美しいけど、なんか物足りない」と引っかかっているうちにあっけなく幕切れしてしまったような、尻すぼみの印象を受けた。
今回が鴨志田視点ならば、次は西原視点で夫や家族を描いた作品が観たい。そんなことを考えていたら、なんと来月から西原理恵子の原作で映画『毎日かあさん』が公開されるという。しかも現実でも夫婦だった小泉今日子と長瀬正敏が夫婦役! こちらは西原節が効いた、より豪快な展開を期待したい。
バード
オススメ度:☆☆☆