今年もあと1週間余、「スッキリ!」は回顧ものが目白押しで、きょう(2010年12月22日)も「名言」「迷言」に続いて、ランキング探偵・上田まりえがベストセラーを解析してみせた。
ベストセラーには世相が出る。意外に少なかったのが小説。「トップ30以内に入ったのは3冊しかない」(オリコン)という。ベスト10では村上春樹の「1Q84」(3位84万7085部)だけだ。
では いったい何が売れていたのか。主流は「実用書」だ。「バンド1本でやせる!巻くだけダイエット」(2位113万7159部)、「体脂肪計 タニタの社員食堂」(4位83万5010部)など5点がランクイン。7位の「スッキリ美顔ローラー」(50万6227個)にいたっては、売っているのは「ローラー」だけで本ではない。
そして、キーワードは「温もり」「励まし」。5位の「超訳 ニーチェの言葉」(61万6007部)と8位「くじけないで」(48万8154部)がそれにあたる。「くじけないで」は今年99歳 になる柴田トヨさんの詩集だ。柴田さんは92歳から詩作を始め、それをまとめたもの。「何かを始めるのに年齢は関係ないんだよという励ましになった」との声にのって、人気はカレンダーやDVDにまで広がっている。そのDVDで柴田さんは「ねえ、不幸だなんてため息をつかないで 陽射しやそよ風は えこひいきしない……つらいことがあったけれど 生きていてよかった あなたもくじけずに」と読んでみせる。
何でいまニーチェなのという気がしないでもないが、「超訳 ニーチェの言葉」にも人は励ましを求めているのだそうだ。ニーチェは19世紀の哲学者。前向きに人生をとらえる哲学を提唱、「自己を超えろ」などの言葉で知られる。編集者は「ニーチェの言葉は励ましてくれる。 元気になれる言葉を求める人が多いんじゃないか」という。
ミソは「超訳」にある。原文をそのまま訳すとけっこう難解だが、これを原文 の意味を替えずに平易に訳したというのだ。実際に街に出て、従来の訳文と「超訳」を読み聞かせてみると、従来のものでは『???』だったが、「超訳」は女子高生も「わかるぅ」
岩崎夏海「書く前から200万部確信」
これにはもうひとつのキーワードが隠されていた。それは「噛み砕く」。それがランク6位の池上彰「伝える力『話す』『書く』『聞く』能力が仕事を変える!」(54万8320部)。池上本ではもう1冊、11位の「知らないと恥をかく世界の大問題」(44万6421部)も入っている。テレビでもおなじみのあの語り口だ。
堂々の1位は「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(121万1835部)。通称「もしドラ」。「マネジメント」は1974年に出たドラッカーの代表作で、経営の教科書だ。「もしドラ」は青春小説風ビジネス書というわけである。
著者の岩崎夏海氏は「書く前から200万部売れると思っていた。経営の本は堅苦しいので、それを何とか打破しようと思った」という。AKB48の峯岸みなみを主人公のモデルにしたのも、計算のうちか。若い女性、中学生までが読んでいる。これで、本家の「マネジメント」も16位 になったというから面白い。岩崎氏は「マネジメントが進めば、世の中もっとよくなると思いますね」とこともなげにいう。
司会の加藤浩次「今年のキーワードはわかりやすいということですかね」
東大の先生ロバート・キャンベル「わからない本を買ってじっくり読むことも大切だよ」といったが、日本人はどうやら軽い方へ軽い方へ流れている。