残虐な殺し屋は14歳の男児、マリファナの売人は4歳の女児――。世界でも有数の麻薬地帯・メキシコの聞きしに勝る麻薬戦争の実態を、「世界びっくりニュース」で作家の若一光司が取り上げた。
今年2月、メキシコ中部の空港で14歳の少年と姉2人が警察に身柄を拘束された。少年の名は エドガー・ヒメネス・ルーゴ容疑者(14)で、メキシコでも残虐さで知られる殺し屋の一人。対立する麻薬組織の主要人物を少なくとも7人は殺害しているという。殺害手口は指や性器を切断して生きたまま皮1枚残して首を切り、見せしめに道路に放棄したり橋に吊るしたりというもの。
ルーゴはアメリカ生まれだが、親の関係で生まれてすぐメキシコのスラム街で孤児同然に育てられた。12歳の時、麻薬組織に拉致され、殺し屋に仕立て上げられる。組織のコードネームは「エル・ポンチス」(マントの男)。拘束時も短銃6丁を所持していたという。
同時に拘束された16歳の姉は、組織の男の愛人で遺体処理にかかわっていたという。
100人殺しても服役3年
少年の素顔は拘束時のVTRで公開されたが、記者の質問に少年は次のように答えた。
「誰が君を雇ったのか」
「エル・ネグロ。強要されました」
「彼は君に何と言ったの?」
「殺しをやるか、さもないと殺されるかだと」
「麻薬をやっていたのか」
「12歳のころから。ボスに強要されました」
今年9月には、麻薬取引が行われているとの通報で警察官が現場に駆け付けたところ、4歳の少女がマリファナの袋を売ろうとしていたという。
それにしても、なぜ少年少女が麻薬組織に利用されるのか。メキシコの法律では子供たちの犯罪に対する罰則は、14~16歳だと最長でも3年間の服役のみ。100人殺しても3年以上服役させることはできない。麻薬組織としては、少年少女は下働きとして使いやすいという事情がある。メキシコ全土で2万人いる麻薬がらみの服役者のうち35%は未成年だ。
少年は、裁判を経ておそらく3年間服役することになるが、素顔が公開されたため、出所後は間違いなく対立組織に殺されると見られている。