欧米に比べ「20年の遅れ」
日本もかつては予防接種先進国だった。おたふく風邪も1989年までは、はしか、風疹との3種混合ワクチンが無料で、接種率は8割に達していた。ところが92年、予防接種禍訴訟で副作用の責任は国にあるとの判決が出た。
ために厚労省は93年、このワクチンの接種を中止。予防接種法を改正して、8種類のワクチンを「国民の義務」から「努力義務」とし、親の自己責任にゆだねて国は一歩引いた。
厚労省は「やれば必ず副作用がある。やらなければ『なんだ』といわれる。そのジレンマを回避した」という。以来、新たなワクチンの導入はゼロだ。同じ期間に、フランスは4種のワクチンを無料接種に追加している。「20年の遅れ」といわれる所以だ。
そのフランスは、「感染症から子どもを守るのは行政の責任」としている。いま、19種類が無料で、ポリオ、ジフテリアが未接種だと、公立学校へは入学できない。政府の担当者は「これによって、社会全体が守られる」という。
データの収集も徹底している。何を接種して、どの病気を防いだか、副作用の事例の分析など、予防接種のメリット、デメリットをすべて公表している。国民が納得したうえでのシステムである。
神谷は「ワクチンを判断できて、国民との接点にもなる組織をつくらないといけない。みんなで決めていくという体制づくりが必要だ」という。 つまりは、厚労省ではダメだということ。責任を負うのが怖い、即ち責任を放棄した役所が権限だけはもっている。これを「仕分けて」新しいものを作る。まさに政治の出番ではないのか。
ヤンヤン
*クローズアップ現代(2010年12月6日放送「ワクチンが打てない~遅れる日本の予防接種~)