ワクチン後進国ニッポン「使えるのに使わせない厚労省」

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   この10月(2010年)、ワクチンの無料化を求めるデモが厚労省を取り巻いた。重病の子どもたちとその親たちだ。6歳の子の父親が言う。

「子どもが髄膜炎になるまでは、日本がワクチン後進国だなんて知らなかった」

   アメリカでは16種類のワクチンが無料で接種される。日本ではこのうち無料はわずか5種類。肺炎球菌、ヒブ、子宮頸がん、インフルエンザ、おたふく風邪など8種類は有料だ。不活性ポリオ、髄膜炎菌など3種は承認すらされていない。なぜこんなにも違うのか。

有料・未承認で「収入格差が健康格差」

   まずは費用の問題がある。ヒブは7000円、肺炎球菌は1万円、多い場合はこれらを4回接種すると計7万円近くなる。親たちにいくら予防接種の重要性を説いても、摂取率が一向に上がらない理由だ。ある小児科医は「親の収入格差が子どもの健康格差になっている」という。

   政府は肺炎球菌など3つのワクチンを新たに無料化する方針を打ち出した。費用は国と市区町村が半々で負担する構想だが、財政難にあえぐ自治体は「自治体の負担力の差で地域内格差が出る」と懸念する。

   もうひとつが承認の問題だ。北海道の3歳児は生ワクチンの接種でポリオを発症した。生きた菌を使うからごくまれに発症してしまう。いま世界では死んだ菌を使う不活化ワクチンが主流だが、日本ではこれが未承認のまま10年になる。

   アメリカでは治験から承認まで2年だった。デモにいた車イスのポリオ患者の男性は、「私と同じような子どもを出さないでほしい」と訴えていた。

   これについて、神谷齊・国立三重病院名誉院長は「潔癖というか審査基準が厳しい。外国から入ってくるものは、すでに人間で治験をしているのだから、もう少し柔軟にしてもいいのではないか」という。また、費用の問題については、「全部無料にしないといけないが、これは厚労省だけでは無理」という。

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