いつも元気でファイト満々。名古屋市の河村たかし市長が、この日ばかりは落胆が隠せない。自らが先頭に立って呼びかけていた市議会解散請求のリコール運動が不発に終わったからだ。
署名46万5602人分のうち、何と24%にあたる11万1811人分が無効とされた。必要数に1万2000人分強足りない形となる。11月25日(2010年)からの署名簿の縦覧で異議申し出ができるが、リコールは不成立の公算が大きい。
「運動に無理があったのでは」
この問題を追いかけてきたレポーターの玉川徹が直撃する。「まさか、10万人分が無効になるとは思いもしなかった」と市長が悔しがる。「(署名審査の基準が)途中で遡って変えられた。今回は議会解散請求だからと、過去の基準より厳しくされた。これは後出しジャンケンだ」。これまでの署名審査は市民の署名をなるべく生かすという観点から、自筆でなくても認めるなど大目に審査していたが、今回はそれが通用しなかった面があるようだ。
玉川は、市長と対立している市議会の桜井治幸議員を訪ねる。こちらは表情を緩めがちにインタビューに応じる。「市長は気の毒だな。彼の心況を思うとかわいそうだ。署名運動に無理があったのではないか、市長はもっと緻密と思ったのに」と余裕の分析だ。
最後に司会の赤江珠緒に「力を落とされているようでね」と言われ、市長は「泣けてくるけど、泣かんけどね」。
不成立の公算大とはいえ、有効とされた36万人の署名の意味は大きい。市長と議会の攻防はまだまだ続く。
文
赤坂和郎| 似顔絵 池田マコト