<マチェーテ>ロバート・ロドリゲスの、ロバート・ロドリゲスによる、B級映画ファンのための映画。それが『マチェーテ』である。そもそもこの作品は、ロバート・ロドリゲスとクエンティン・タランティーノが合同制作した『グラインドハウス』の劇中に流れた単なるニセ予告篇だった。それを見たファンの要望で、本当にこんな映画が制作されてしまったわけだか、待ち望んだファンの期待を裏切らない、見事にぶっ飛んだ作品に仕上がっている。
メキシコの連邦捜査官・マチェーテは、麻薬王トーレスの捜査中に妻子を惨殺されてしまう。それから3年後。テキサスで労働者としてひっそりと暮らしていたマチェーテだったが、ある日、彼に移民嫌いで有名な米上院議員の暗殺依頼が舞い込んでくる。
デ・ニーロ、セガール…豪華な顔ぶれ
エログロ満載でR-18(18歳未満は鑑賞不可)の指定をくらっただけあって、悪ノリして作ったとしか思えないようなアホっぽいシーンの連続である。必然性がまったくないエロ、笑えるほどにやり過ぎなバイオレンス描写がB級感を際立たせ、作品を盛り上げている。
しかし、ただのバカっぽいB級アクション映画に見えるが、実は脚本がかなり本格的だ。さりげないセリフのひと言が重要な布石になっていたり、実際に今のアメリカが抱える移民問題を話のタテ軸にもってくるなど、物語としても十分楽しめる映画になっている。
キャストの豪華さもハンパない。ロバート・デ・ニーロ、スティーブン・セガール、ドン・ジョンソン、ジェシカ・アルバ、ミシェル・ロドリゲス、リンジー・ローハンと、A級B級揃った俳優陣がロドリゲス監督の元に集結。ある意味『エクスペンダブルズ』と対抗できるくらいの豪華さである。悪徳政治家にデ・ニーロ。麻薬王にセガール。世の中をナメきった金髪ビッチ娘にローハンなど。キャスティングにまでファンのツボを刺激するロドリゲス監督は、さすがとしか言いようがなない。何よりもは『史上最も悪人面な俳優』ダニー・トレホが主演だ! もともと彼はロドリゲス・ファミリーの一員ではあったが、まさか主演でラテンヒーローを演じる日が来ようとは……。
ロドリゲス監督の映画を何度か観てきた方にとって、この映画は間違いなく面白い。しかし免疫のない方には、あまりオススメ出来ない映画であることも間違いない。
巴麻衣
おススメ度☆☆☆☆