<99年の愛~JAPANESE AMERICANS(TBS系11月3日~7日夜9時)>脚本の橋田壽賀子さんはこのドラマが自分の「遺言」て言ってますよね。「戦争と平和」を生涯のテーマに書き続けてきて、これが集大成ということなのでしょうが、それにしても長い遺言でしたね。11時間20分ですもの。じゃあ、それだけの長さに見合うドラマだったかというと、私はシンドかったです。
えーと、えーと、こいつ誰だっけ
開局60周年記念ということでTBSは全力投球でした。プロデューサーの瀬戸口克陽、演出の福澤克雄は「私は貝になりたい」や「砂の器」、たしかテレビ放送50周年記念番組も作ったTBSのトップコンビですよ。音楽は千住明、そして脚本は橋田壽賀子というわけです。橋田さんはぶれることなく家族愛、夫婦愛を描いていましたが、長いからでしょうか、いろんなドラマがごちゃごちゃと混ざっている印象で、新しい踏み込みは感じられませんでしたよ。「おしん」でしょ、「涙そうそう」でしょ、上條恒彦が出てくると「オレゴンから愛」とどうしても重なっちゃう。それが邪魔して、このドラマとしての世界に入っていけないんですよ。
加えて、ひとつの役に俳優が2人ずついて、しかも草彅剛なんかは1人2役ですからね。中井貴一と草彅、仲間由紀恵と八千草薫、イモトアヤコと泉ピン子、松山ケンイチと上條を頭の中で一生懸命つなげなければいけないから忙しくて、役のイメージが固まらない。えーと、えーと、こいつ誰だっけてなものですよ。とにかく長すぎるんです。遺言だからって何でもかんでも詰めるなよ、こんな長いドラマ見せないでって、途中から根気比べですもん。前編後編3時間ずつにして、2晩でやったら、もっと印象深いドラマになったと思うんですけどね。
妙な商売っ気も気になりました。冒頭でイチローの試合が出てきたのですが、反日の時代からやっとここまで来たというメッセージなのかもしれませんが、あれは余計です。イチローもドラマに取り込もうというあたりの計算、私は嫌いですね。それに、前の番組のバレーボールが長引いたとかで、第1話からいきなり25分遅れの放送、第4話も9時からではありませんでした。バレーボールの視聴率も捨てられないということなんでしょうね。でも、こんなのは、作っている人にも楽しみにテレビの前で待っていた人にも失礼です。あそこまで60周年と入れ込むなら、中継カットで意気込み示せと言いたかったですよ。
拾いものはイモトアヤコ。大変いい芝居してましたよね。おおいに株を上げて、これから活躍の場が一気に広がっていくんじゃないでしょうか。まあ、制作サイドも10時間以上も見た視聴者も、お疲れさんでした。
渾身の 遺言尾張を 素通りし