レアアース副産物「トリウム」欧米で原発燃料研究

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   レアアース(希土類元素)は中国が世界の生産量の97%を占めているが、中国政府が輸出枠制限をかけたことで世界中が揺れている。「クローズアップ現代」はレアアース採掘に伴う副産物として出てくる放射性物質のトリウムに注目した。

   レアアースの鉱山開発にとって、トリウムは放射性廃棄物として管理や処理にコストがかかり悩みの種。しかし、世界各国で研究が進められている原発燃料への活用に成功すれば、「レアアースと原発燃料」という一石二鳥になる。

中国が持て余す放射性廃棄物

   レアアースは電気自動車などのエコカーやパソコン、携帯電話、風力発電の製造には欠かせない。世界の需要の半分を占める日本は、大半を世界最大の産出国であり価格の安い中国からの輸入に頼ってきた。その中国が輸出枠を削減、日本への輸出量は2004年には6万トンを超えていたが、10年は3万トンと半分になっている。

   キャスターの国谷裕子「中国が供給を絞ったことで世界が慌てふためいている状況ですが、中国がこれだけ影響力を持つようになった背景には何があるのでしょうか」

   ゲスト出演の東京財団の平沼光研究員は「人件費の安さ」があるという。人件費が安ければ価格が安くなり、他の生産国は市場で勝てず撤退していったという。

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   加えて環境問題。平沼によるとレアアースをめぐる環境問題には2つある。レアアースは鉱山に酸性の薬品をかけて溶かして抽出する。その際、残った薬品を処理するためにコストがかかる。もう一つの難題がレアアースの鉱石に含まれる放射性物資のトリウムの管理と処理。これにもコストがかかる。

   平沼は「中国はこれまでこれら環境問題にコストをかけてこなかったため、安いレアアースをどんどん供給できたのだろう。今回、輸出枠を絞った背景には、環境問題を無視できなくなったこともある」という。

EU10年前から商業用実験

   にわかに注目されてきた放射性廃棄物のトリウム。これを原発の燃料に使う研究が世界各国で始まっている。ただ、核分裂を起こさないトリウムだけでは、ウランやプルトニウムの核分裂を利用する現在の原発では燃料として使えない。

   EU(欧州連合)の原子力研究機関である「超ウラン元素研究所」は、プルトニウムにトリウムを混ぜて燃料にする商業用原発の実験に10年前から取り組んできた。ロンディネーラ所長は「これまでの実験の結果、従来のウラン燃料に比べて遜色ない。トリウムは有望と考えている」という。

   アメリカもグリーンニューディール政策を進めるオバマ政権の支援で、トリウムを資源として活用する動きが活発化している。バージニア州にあるライトブリッジャー社の研究で、ウランとトリウムを組み合わせることで、ウランが燃焼したときに出るプルトニウムの量が従来の半分になることが分かった。

   しかし、平沼は否定的だ。

「いろいろ研究が進められているが、既存のウラン、プルトニウムに比べメリットがあるのか、コストが合うのか、技術的課題をクリアできるのか、全く未知数。すぐ使えてハッピーという単純なものでない」

   原発依存が高い日本は、それでもトリウムの有効活用に取り組む必要があるのではないか。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2010年11月10日放送「放射性物質『トリウム』最前線」)
文   モンブラン
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