日本の国民皆保険崩れる懸念
尾身茂・自治医大教授は外国人受け入れのメリットは認めながらも、「日本には一流の技術の一方で、医師のレベルのばらつき、医師不足、言葉のハンディなどアンバランスがある」と言う。また、保険外診療の外国人受け入れが、国民皆保険のシステムを崩す懸念があるともいう。
神戸で開かれた「医療の産業化を考える」シンポジウムでも、これが議論になった。世界レベルの病院整備の必要性を求める声の一方で、日本医師会の中川俊男副会長は「国が堂々と儲けなさいといっている。受け入れられますか。国民皆保険が崩れるアリの一穴になりかねない」と反対した。
医療の商業化がお金持ちだけの医療になり、医師の偏在をまねくなどの矛盾は、すでにタイでは顕在化していた。日本でも地方の医師不足は深刻だ。現状をそのままに「医療ツーリズム」を受け入れたらどうなるか。
尾見教授はこう提言する。
「ルールを決めないでやると、皆保険が崩れる。まず、医療改革のスピードを上げないといけない。国民のニーズに応えるものになるよう、知恵を絞るべきだ」
国谷裕子キャスターが「スタートまで2年しかないが」と懸念を口にした。当然だろう。今の医師不足・都市偏在や高齢者医療の混乱も、医療費削減から出てきた矛盾だ。これを解決するだけでも容易ではない。そろばん勘定ばかりで、かくあるべしという哲学がないのが気にかかる。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2010年11月08日放送「外国人患者を獲得せよ~医療ツーリズムの光と影~」)