耳かき店員の女性とその祖母を殺害したとして死刑が求刑されていた林貢二被告(42)の裁判員裁判。裁判員は悩みぬいた末に死刑を回避し、無期懲役を言い渡した。
初めての死刑求刑に6人の裁判員はよほど悩んだのだろう。本来3日間のはずの評議を1日延ばして4日間に。さらに伸びて、評議は判決のあった1日午前中まで続いたという。
裁判員に「重刑判断」酷か
この判決を専門家はどう見ているのだろう。
元検事の田中喜代重弁護士は「結論的には妥当な判決だったと思う」と述べ、その根拠を次のように語った。
「今の日本ではよほどのことがないと死刑にはしない。100人が100人とも死刑という場合にだけ初めて死刑ができる。
今回は動機においてわいせつ目的とか強盗目的とかではなかった。ある程度、突発的な部分もあるし、非常に反省している。前科もない。死刑と無期のギリギリのところだが、プロの人間でも8割方は無期と思う」
ただ、今回の裁判で浮き彫りになったのは、市民から選ばれた裁判員に、死刑か無期懲役かという酷な判断を迫るのが妥当かどうかという点である。
司会のみのもんたも「死刑か無期かの判断は難しいし、厳しすぎますよね」との疑問視する。田中は裁判員の心情を次のように語った。
「縁もゆかりもない、何の恨みもない人間に対し、絞首刑の踏み台を外すスイッチを押すわけですから、被害者の死と被告の死の狭間に入って感情が揺れたと思う。無期にしたからといって、遺族の方はどう考えるかという思いにずっとかられていくでしょう。
裁判員に初めから死刑だ、無期だという判断を求めるのは厳しい。小さい刑から馴らして行ったほうがいい」
田中は制度見直しを提案した。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト