白人中間層「貧乏人に税金ばらまくな」
「チェンジ」を掲げたオバマ政権はもう一つ大きな財政出動をした。医療保険改革しちが、これがまた白人中間層から不評を買う。「貧乏人に金を分け与えてくれと政府に頼んだ覚えはない」「自分の稼いだ金を分け与えるなんて真っ平だ」というのである。
こうした不満は「ティーパーティー」(茶会)と呼ばれる市民運動につながっていく。オバマ路線に反発する白人保守層の集会に端を発した「ティーパーティー」は全米に広がり、今や2700超の団体が活動しているとされる。彼らは「個人の自由な競争こそがアメリカ建国の精神だ。政府は貧困層のために巨額の税金を投入し社会主義的だ」と主張する。「反オバマ」で一致する共和党保守派と「ティーパーティー」が手を組むのは当然だろう。中間選挙ではオバマ政権に激しい逆風が吹くと番組は読む。
この先、オバマ大統領は行く手を阻まれて再選も危ういのか。ゲストのトーマス・マン博士(ブルッキングス研究所)の見方は必ずしもそうではない。次のように分析する。
「1982年当時、レーガン大統領の支持率は30%半ばという苦しい状態だったが、景気が回復し、次の大統領選で地滑り的勝利して再選された。いま起きている変化は無党派層や浮動票の動きだ。彼らはそれほど政治に興味があるわけでもなく、政治動向に注意を払ってもいない。考え方は現実的で、景気が良ければ政府が正しいから任せようとし、悪ければ間違っているから排除しなければと考える。本能に従って行動する」
「風」が共和党に吹いているということだろう。「ティーパーティー」のメンバーが聞いたら怒りそうな博士の発言は、日本に向けたコメントのように感じられた。
*NHKクローズアップ現代(2010年10月28日放送「逆風のオバマ『改革』」の行方)