「最愛の人との死別」受け入れられるか…敬遠もったいないゲイ映画

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(C)2009 Fade to Black Productions, Inc. All Rights Reserved.
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シングルマン> 大学教授のジョージは、16年間共に暮らした恋人(男)を交通事故で失い、8か月たった今も悲しみにくれていた。もはや生きる意欲を失った彼は、ある朝、「今日1日を過ごしたら自殺しよう」と決意する。

   ところが、死を決意したとたん、隣家の疎ましい少女との会話に喜びを感じたり、教え子ケニーの若々しい美しさに心惹かれたり、夕焼けの色に感動したりと、日常がこんなにも美しく、驚きに満ち溢れたものだったのかと気づく。そして、いよいよ夜になり…。

   グッチやイヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターとして名を馳せ、2005年からは自身のブランドを立ち上げて世界的に活躍するファッションデザイナー、トム・フォードの初監督作品である。

   英国のゲイ作家C・イシャーウッドが1960年代に書いた同名の小説を下敷きに、自らもゲイと公言するトム自身の内面も織り交ぜたという本作品は、昨年のベネチア国際映画祭をはじめ、20の映画賞で14部門受賞、23部門ノミネートという栄誉に輝いた。

ミドルエイジ・クライシス

   美を生業としているファッションデザイナーが監督というだけあって、ファッションやインテリアはもちろん、登場人物のちょっとした台詞までがエレガントで、そこかしこにセンスの良さが光る。目の保養になることうけあいの映像美だ。

   ただし監督がゲイ、原作者もゲイなので、ゲイ色もなかなか強い。むやみやたらと男の裸体シーン出てくるし、登場人物の誰もが彫りの深い美男子(トムの好みなのかな)。出会ったばかりの男と男のアイコンタクトによる暗黙の了解的なやりとりのシーンは、ゲイ特有のものだろうという感じがして、生々しくてドキドキする。

   とはいえ、ただのゲイ映画と簡単にくくって敬遠してしまうのは非常にもったいない。物語のテーマは、人生で誰もが直面する「最愛の人との死別」と「ミドルエイジ・クライシス」。テーマ自体に普遍性があり、ゲイならではのシーンも満載ながら、性別に関係なく誰が観ても共感できる内容に仕上がっている。さすが世界各国の映画祭が認めただけあると納得。映画が終わる頃には、愛や人生についてもう一度、考えてみたくなっていることだろう。

   ちなみに、八方美人な性格の私は、「今生でジョージのように一人の相手を死ぬほど愛せるような日は訪れるのだろうか」という難問にぶつかってしまったが・・・。皮肉めいたラストは賛否両論に分かれそうだが、秋の夜長、たまには人生に思いをはせるのもいいのでは。しっとりした気分に浸りたい30代以上のオトナにおすすめ。

バード

   オススメ度:☆☆☆

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