足りない対策専門医
「最強の耐性菌といわれるものがこれまで日本で報告されているのはまだ2例。国内の広がりをどうとらえたらいいですか」
キャスターの国谷裕子の問いかけに、取材した科学文化部の田中陽子記者が次のように答えた。
「海外渡航歴のない高齢の女性からNDM-1が発見されたことで、すでに国内で広がっているという見方が大半なんです。2例とも患者を隔離するなどで院内感染は起きていませんが、広がると大変怖い」
耐性菌に強い新薬の開発は今のところ期待できない状況というなかで、課題は耐性菌をどう封じ込めるか。
京都大学附属病院では、抗生物質の使用をできるだけ抑制する方向で対応している。また岐阜大学附属病院は耐性菌を広げないための感染制御チームを設け、どの病棟でどんな細菌が検出されたか日々チェック。目に見えない細菌を可視化することによって耐性菌に対する認識を高めている。
ただ、課題をクリアするには3000~4000人が必要とされている感染対策の専門医が、現在は1000人余りしかいない。それをカバーするために、専門医に不適切な抗生物質の使用を抑制してもらうなどのノウハウを中小病院に提供する対策も検討中という。
*NHKクローズアップ現代(2010年10月20日放送「多剤耐性菌に立ち向かえ」)