印刷と電子で「住み分け」
電子化はこれまでの「紙の本の常識」を覆す。いま年に8万点もが世に出ながら、3か月も経たないうちに書店から消えている。「紙のコスト」のせいだが、デジタルの世界ではこのコストがかからない。絶版本とか採算に合わないものでも電子には乗る。
「本は歴史の証人みたいなもの。古くなったら要らなくなるものではない。ちゃんと残しておかないといけない」(岩波書店)
1人でコツコツと書いていたミステリー小説がネットで売れ始めたという例もある。ある編集者は「ソーシャル・リーディング」を試みる。電子本の感想を書き込んで、読者間のコミュニケーションを生むのだという。
津野氏は「印刷と電子は肩を並べていくだろう。紙が駆逐されることはない」という。多分、正しいのだろう。しかし、電子の方は未知の可能性がいっぱいだ。歴史書などではリンクを多用することだってできるだろう。書籍に動画を入れることだって可能だ。
そういえば昔、手塚治虫の未来マンガで、本を開くと「あ、挿絵が動いてる」というのがあった。いまiPadは見事それに到達した。われわれはSFの世界にいるわけだ。
よく「読書離れ」がいわれるが、電子書籍が新たな読書人口を作り出すかもしれない。なれば、互換性のない端末の乱立だけは避けてもらいたいものである。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2010年10月18日放送「電子書籍が『本』を変える」)