広がる「グリーフケア」
「グリーフ(悲嘆)ケア」というのだそうだ。群馬・高崎の診療所はもともと在宅医療なので、患者が亡くなったあと、残された家族の心のケアもしている。医師や看護師がときどき訪問する。
25年連れ添った妻を亡くした男性(55) は、「誰にも話せないが、医師や看護師には話せる」と語る。垣添さんも「死ぬまで見てもらえるから、それがいちばん自然だ。診療報酬も考えていいのではないか」とまで言う。
東京・足立区の社会福祉協議会は、公的サービスとして日常生活のケアを24時間態勢でやっている。一定の利用料を払うと、協議会が「見守り」「金銭の管理」から「入院時の保証人」までをやってくれる。妻を亡くした男性の多くは、金銭管理から役所通いまで妻に任せきりだった。「助かってます」と利用者の男性は言っていた。
垣添さんは「本を書くことで癒された」という。体験者として「新たな人生に結びつけるきっかけは必ずある」と助言している。
しかしひるがえって、こうした伴侶に恵まれない、あるいは戸籍だけ残して消えた人たちがいる。ほんの数十年前には、もっと理不尽に生死を引き裂かれた人たちがいた。だれも「ケア」なんていわなかった。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2010年10月4日放送「男 ひとり残されて」)