小沢一郎元民主党代表の政治団体の政治資金規正法違反(虚偽記載)をめぐり、東京第5検察審査会が2度目の議決を公表した。結論は強制起訴。
「朝ズバ!」に元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士がゲスト出演し、不起訴とするプロの検察官と市民代表の検察審査会で判断が分かれたポイントについて、富士山にたとえて解説した。
判断が別れた最大のポイントは、小沢の元秘書で衆院議員の石川知裕被告=同法違反で起訴=の捜査段階での供述調書の信用性。元秘書が小沢に報告している内容が具体性に欠けている点をどう判断するかで、検察官と検察審査会は異なっていた。
「富士山は遠くで見るとすごく綺麗ですよね。遠くで見てあれが富士山、まさに小沢さんの犯意が認められるでしょうととらえたのが検察審査会。
登ってみて間近に見るとゴミがある。実際の富士山は綺麗ではないととらえ、小沢さんの犯意を認めるのはムリがあると判断したのが検察官だ」(若狭勝)
たしかに、登っては富士山の全体像を見ることはできないが、遠くで見たのでは麓にどんな木が生え、どんな岩があり、ゴミが落ちているかは分からない。
逮捕された前田検事の取り調べ調書
司会のみのもんたが「大阪地検特捜部の証拠改ざん事件、影響はあるでしょうね」
証拠改ざん事件で逮捕された大阪地検特捜部主任検事の前田恒彦容疑者は、今年1~2月に東京地検特捜部に応援に行き、小沢の元秘書、大久保隆規被告の取り調べを担当している。
検察審査会の今回の判断は、大阪地検特捜部の事件をさかのぼる9月14日、民主党の代表選当日に行われている。
若狭「小沢さんの弁護人は、(前田容疑者を引き合いに出し)検察官が無理やり供述調書を取ったということを訴えるでしょう。裁判官はそれをどう受け止めるかですね」
有罪か無罪かの判断が非常に難しいが、ひとつ気になるのは、今回の検察審査会議決で「国民は裁判所に無罪なのか有罪なのかを判断してもらう権利がある」とし、黒白の判断を裁判所にゆだねた点だ。
検察官はこれまで「高度な見込み」をもとに起訴し、裁判でも高い確率で有罪が追認されてきた。それだけに、日本では起訴されただけで社会的、肉体的、精神的ダメージを被る社会が定着している。無罪になった場合は誰がその責任を取るのか。
検察の判断を否定し、黒白の判断を裁判所にゆだねるのも結構だが、そこが抜け落ちていては著しく公正を欠くことになる。