「トイレ」で浮き彫りになる異文化衝突と新しい家族像

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(C)2010
(C)2010"トイレット"フィルムパートナーズ

   <トイレット> 『かもめ食堂』『めがね』など独特の「癒し系作品」で人気の高い萩上直子監督の3年ぶりとなる作品。『かもめ食堂』と同じくすべてのシーンを海外(カナダ・トロント)で撮っている。さらに日本人キャスト1人(もたいまさこ)、全編英語という意欲作。

ふんわり浮いた独特の空気感

   母の死をキッカケに青年レイが実家に戻り、物語は始まる。家には引きこもりの兄モーリーと生意気な妹リサ、死んだ母が日本から呼び寄せていた「ばーちゃん」がいた。プラモデルオタクのレイは他人とコミュニケーションを取るのが苦手で、彼にとって兄妹やばーちゃんの存在は自分の生活ペースを乱す邪魔者。ばーちゃんときたらいつも不機嫌そうで、いっさい言葉を発しない変わり者、トイレから出てくるたびにため息をもらすのだ。

   この奇妙な共同生活を萩上監督は相変わらず「ゆるい」語り口で描いていく。過去の作品同様、ストーリー説明を排除する独特の演出は健在で、画面にはゆる~いほのぼのとした空気が漂う。そして、作品のタイトルである「トイレ」を通して「家族」を描いていく。

   トイレはそれぞれの文化で様式が違うが、毎日の暮らしには絶対不可欠な物だ。日本人は完全個室のトイレは癒しの空間で、用が済んでも書物などを読み、しばらく便座に腰を掛けている人も少なくない。日本のトイレは世界でもとりわけハイテクで、サービス精神が高いらしい。舞台は外国だが、常に日本的な香りが漂うのは、監督が日本人だということはもちろんあるが、この「トイレ」によるところも大きい。

   「トイレ」を介して異文化の衝突を描き、さらには血縁を越えた家族というあたたかさを描いたのは見事。相変わらずのセンスの良さを感じる。

   だが、ふんわり浮いた独特の空気感と引き換えに、この監督の作品は観る者を選んでしまう。それも監督の狙いなのかもしれないが、話の筋や映画的スペクタクルを味わいたい人には物足りないだろう。何も考えず映像を観て、感覚で受け取りたい人には向いている。荻上監督の作品は男性よりも女性に人気があると聞くが、大いに頷ける。

                  

川端龍介

   おススメ度☆☆☆

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