中国の軍事管理区域に入り込んでビデオ撮影していたとして拘束されていたゼネコン準大手「フジタ」の社員3人が、30日(2010年9月)夜、釈放された。
1人が依然として拘束されたままだが、1日にも帰国する社員3人はどこまでしゃべれるのか。
日中交渉のカード
釈放された社員3人はフジタの現地法人がある上海へ空路で移動。空港に到着した社員は記者の質問に答えず、コメントも「本当に申し訳ございません。ご迷惑をおかけしました」だけだった。
中国側の説明では「3人は違法活動を認め始末書を書いたので釈放した」が、拘束中の社員については「さらに調べる必要がある」という。
なぜ1人だけ拘束を続けるのか。外交政策研究所の宮家邦彦は「『目には目を』の対応だ」と次のように言う。
「日本側は尖閣諸島沖事件で船員14人を早期釈放し、船長1人を拘束した。その対抗措置だろう。さらに、今後の日中交渉を優位に進めるためのカードとして1人を拘束し続けているのでしょう」
キャスターの加藤浩次が目を剥いて、「尖閣諸島で巡視船に中国の漁船が衝突してきたのは明らかでしょ。これに対し、本当に軍管理区域に侵入し写真を撮ったかまだ明らかにされていない」と憤慨する。
日本政府が尖閣諸島沖衝突事件のビデオ公開をモタモタ渋っているうちに、中国政府に主導権を握られていしまったのだ。
違法行為を認めた始末書もあるぞ!
テリー伊藤は「3人が帰国した段階で記者会見すべきだと思う。ただ、3人の発言によっては、逆に拘束されている社員の釈放がさらに難くなる状況をつくってしまう難しい問題が残る」と言う。テリーはそんな心配をしながらも、「誤って軍管区域に入ったのか、そうではなかったかぐらいは(記者会見で)言ってほしい」
一番聞きたいところだが、この事実関係を明らかにするのは難しい。故意に侵入したなら何の目的でとなるし、誤って侵入さったとしても、中国側はそうは言ってほしくない。人質もとられ、違法行為を認め始末書を書いた後ではさらにしゃべれないだろう。
それやこれやで目につくのは、やりたいことをマイペースで進める中国側に比べ、日本政府対応の稚拙さだ。
30日の衆院予算委員会で行われた集中審議でも、まともに答えられない菅首相に代わって再三にわたり仙谷官房長官が答弁し、ひんしゅくをかった。予算委員長が菅首相の肩書を『官房長官』と間違えるオマケまでついた。さもありなん。