来年7月24日の地上デジタル完全移行まで1年を切って、NHK、民放とも「切り替えPR」に懸命だが、トラブルも増えている。地デジが映らないのだ。朝日新聞(8月23日付)の「声」欄にも千葉県茂原市に住む男性のこんな投書が載った。
<県内に住む義母が地上デジタル対応のテレビを購入しました。スイッチを入れても、地デジ放送は映りません。電波が弱すぎるとのこと。義母は結局、地デジ用テレビでアナログ放送を見ています>
マンションなどの共同アンテナが地デジ対応になっていないなら映らないのもわかるが、「電波が弱すぎる」とはどういうことなのか。国を挙げて「地デジ化」を喧伝してきたのに、電波がろくに届かない地域が首都圏にもあるというのは「ペテン」に近い。デジタル放送推進協会はこんな説明をする。
「アナログ波はちょっとでも電波を受信していると、ザラザラの画面ではあっても何らかのものは映ります。しかし、地上波は一定以上の強さの電波を受信しないとまったく映りません。新聞の投書の方は多分この状態だと思います。
弱い電波しか届かない原因はいくつかあります。鋭意建設中ですが、デジタル用送信所がまだ間に合っていないケース、立木やビルの陰になっていたり、近くに高圧送電線や鉄道・空港などがあるケースなどです。完全移行の時点で受信できない世帯は30万世帯と予想され、暫定的に衛星放送で送信し、5年間で解消する計画になっています」
最終的にそれでもダメなときは、高性能アンテナやブースターなどを家庭に設置する必要があるが、状況によっては設置資金に政府の補助があるという。
「どういう原因で映らないのかはそれぞれなので、各県の『デジサポ』に早めにご連絡ください。完全移行が近づくとご相談が増えて、間に合わないことも予想されます」(推進協会)
地デジの映らない対応テレビで、画面の上下がカットされたレターボックスサイズのアナログ放送を見せられ、「この放送は来年7月に終了いたします」のテロップが流れているなんて、冗談にもならない。(テレビウォッチ編集部)