大阪府東大阪市で生きていれば149歳という住民の戸籍が残っていた。生まれたのは1861年、文久元年というから江戸時代だ。皇女和宮が徳川14代将軍・家茂と結婚し、坂本龍馬もまだ土佐でくすぶっていた年である。アメリカではリンカーンが大統領に就任している。こんな戸籍を市の戸籍担当者は放っておいたわけだが、「朝ズバ!」は「朝刊!ズバ斬り」で取り上げ、司会みのもんたもコメンテーター陣も、呆れるやら驚くやら…。
職権調査するのが役所の仕事
東大阪市は「順次(削除業務)をやっていたが、残ってしまったんだと思う」と説明するが、担当者は最高齢者がニュースになるたびに、「うちの街にはもっと高齢者がいるぞ」とでも思っていたのだろうか。性別不明の江戸時代生まれが残っていたら、最初におかしいと気づくはずだ。この149歳を含めて、東大阪市には戸籍上120歳以上が228人いるというのだから、市役所は職務怠慢もいいところである。
「こういうことほど自治体がきちんとやらないとまずいんじゃないですか」
みのもんたがコメンテーターの片山善博(前鳥取県知事)に聞く。
「住民台帳というのは届け出主義になっていて、役所は(死亡の)届け出がないから(戸籍削除)はできないと言うんですが、これは間違っています。一応、届け出は認めるんですが、後から職権調査しなければなりません」
それはそうだろう。「死にました」という申請を「はい、そうですか」と受け付けるだけでは、悪意で他人の戸籍を消してしまおうということがまかり通ってしまう。
「いい加減にしてよ。ひどいなあ」
みのは独り言のようにつぶやいた。
文
赤坂和郎| 似顔絵 池田マコト