ブリーダー(繁殖業者)が奈良県山中にペット犬32匹を投棄していたが、ペットブームの裏にはびこる悪質ブリーダーの実態を取り上げた。まずは、動物愛護団体が撮影した関東地方のあるブリーダーの施設内部の映像――。
狭い部屋に小さなケージが所狭しと並べられ、ペットショップで人気の犬ばかりおよそ100匹が閉じ込められている。ドッグフードは腐敗し、なかには糞を食べているイヌもいる。
撮影した女性は「暑い中で洗ったりされたこともなく、糞尿にまみれて床には虫がわいていたり…。爪は伸び放題だし、皮膚炎を患って毛が抜けて皮膚が赤くなっている状態のイヌもいた」と生々しい有り様を語った。
この愛護団体のメンバーは、この施設から状態の悪いペット犬6匹を保護し、現在は飼主も現われて元気に暮らしているという。
成長すると予防薬与えず見殺し
なぜ、これほど悪質なブリーダーが横行するようになったのか。ペット業界を取り巻く状況について女性ブリーダーが解説してくれた。
「7~8年前だと、小売業者を対象にしたオークション会場で、1回に出されるイヌは300匹ぐらいと言われていました。今はその3倍、1000匹ぐらいは出ている。
そうなると高値で取り引きされなくなる。ブリーダーも単価が安いから数を増やそうとするんです。
一般の客が可愛いと思うのは生後2か月から3か月過ぎたぐらいまで。それを過ぎると売れなくなる」
売れなくなると業者はどうするのか。女性ブリーダーはさらに続ける。
「悪質な業者のなかには、毎月ちゃんとやらなければならないフィラリア(寄生虫の一種)の予防薬をやらないブリーダーもいる。薬をやれば長生きしすぎて頭数が減らないから早く死なせるためなんです」
この女性ブリーダーは、売れなくなったイヌは飼い主を捜して無料で譲り渡すようにしているという。
コラムニストの勝谷誠彦が政治家の出番を促した。
「総量規制するとか、やりようはある。ただ、政治家が法律を作ってもカネにも票にもならないので、利権の谷間に落ちている。ペット犬を大切にしたいと思っている国民はいっぱいいるのだから、ちゃんとした政治家が出てくると応援しますよ」
光と影のギャップがますます広がるペット受難の日本。もただ「可愛い」というだけで飼う側にも責任はないか。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト