床下の小人の健気さ。それに比べて「人間」はどうか…

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<借りぐらしのアリエッティ>イギリスの女流作家メアリー・ノートンの児童文学『床下の小人たち』をスタジオジブリが映画化。後継者不在という問題を抱えていたスタジオジブリが、37歳のアニメーター米林宏昌に初めて監督を任せた。

   身長10センチの小さなアリエッティ一家は、郊外のとある屋敷の床下で、床上の人々に気づかれないようひっそりと暮していた。「人間に姿を見られてはいけない」という掟のもと、自分たちに必要なものを必要に応じて床上から『借り』て暮していた。

   ある日、もうすぐ14歳になるアリエッティ(志田未来)は、父のポッド(三浦友和)と床上へ初めての『借り』に出かけ、病気療養のために屋敷にやってきていた少年、翔(神木隆之介)に姿を見られてしまう。初めての『借り』で失敗し落胆するアリエッティ。

   しかし翌日、「おとしもの」というメモと共に、アリエッティが『借り』の途中で落としてしまった角砂糖が一つ縁側に置かれていた。翔がやったのだ。思っていたのとは違う人間の対応に戸惑うアリエッティは、掟を破り翔と接触し、次第に魅かれ合っていく。

スタジオジブリの将来になう後継監督

   人間社会へ『借り』に出る小人という設定は、自然と共存し『狩り』をしていた人間の姿を思わせる。しかし、「人間に姿を見られてはいけない」という掟、絶滅しつつある小人たちという状況から分かるように、小人と人間はうまく共存できていない。自然対人間で思い出される宮崎アニメ『総天然色漫画映画 平成狸合戦ぽんぽこ』の痛快活劇も成り立たないほど、アリエッティたち小人の現状は苦しい。その設定が現代の閉塞感をうまく表している。

   ただ、本筋となるアリエッティと翔の関係は消化不良。禁断の愛に発展しろとまでは言わないが、もう少し「一緒になりたい」という夢が見えても良かったのではないかと思う。

   声優デビューを果たしたアリエッティ役の志田未来や神木龍之介、大竹しのぶ、樹木希林など豪華声優陣も見所の一つ。俳優が声優をつめると、顔が浮かんできて邪魔になることが多いが、そこは達者な人たちだから、役にすんなりと入り込むことができる。とくに、屋敷のお手伝いのハル役の樹木希林は、好奇心旺盛なおばあさんを見事に演じきり素晴らしかった。

   テーマがいまいち伝わってこなかったことは残念だけど、アリエッティの髪の動き、小人の視点カットなど、米林監督ならではのすばらしい表現が随所に見られる。ジブリの将来を担う監督が誕生したということである。

野崎芳史

おススメ度☆☆☆

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