ガン宣告「あと10年生きられませんか」
「週刊朝日」は緩和医療医として1000人以上を見届けてきた医師が語った、「人が死ぬ前に本当に後悔すること」という特集を組んでいる。
当たり前すぎる企画だが、自分の身の周りに亡くなる人間が多い年代になると、思わず読んでしまう。
今の週刊誌の平均読者年齢は50歳前後だろう。文春、新潮がもう少し高く、「週刊現代」も最近では80歳のセックスなどをやっているから、高くなっているに違いない。ほぼ団塊世代雑誌なのだから、こういう企画をもっとやったらいい。
私が昔、ガンの専門医から聞いた話だが、ガンだとわかると人は、例外なく、あと10年生きられませんかと言うそうだ。50代60代はもちろん、90になっても同じこと言う。自分の人生を整理するためには、それだけの時間がほしいということなのだろう。
私が親しくさせていただいた作家の山口瞳さんは、ホスピスへ入っても、最後まで新潮の連載「男性自身」を書き続けた。最後の頃は、書いていることが支離滅裂になっている箇所があるのだが、編集部はそれを直さず、そのまま掲載した。
呑む打つ買うで勇名を馳せた将棋の芹澤博文九段は、死ぬ間際に、奥さんに「ありがとう」と言った。
私が尊敬していた芸能評論家は、「死にたくない」という絶叫の入ったテープを残し、親しかった人間のところに送るよう遺族に頼んだ。
名画「最高の人生の見つけ方」は、余命6か月を宣告された2人の男(ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン)が、死ぬ前にやり残したことを実現するために、2人で旅に出る話だが、この特集でも「会いたい人に会わなかった」「行きたい場所に旅行しなかった」「美味しいものを食べておかなかった」という後悔をしないよう、日頃から考えて生きることだと医者は言っている。
作家の嵐山光三郎さんは、もちろん存命だが、若い頃、これだけはやりたいと思ったことを100書いて、それを全部実現したという。その中には、笑い出すようなものもあるが、それを実現しようという気力が人生を充実させるのだ。
嵐山さんは、40代でそれを全部実現してしまったので、新たな100を考えて、実行しているという。
この中で、京都大学大学院教授カール・ベッカー氏が著書で、「日本人が世界で一番死を怖れている」と指摘しているとある。宗教的な問題もあるのかもしれないが、とりあえず、いますぐにやれることから始めて、悔いの少ない人生の終わりを迎えたいものですな。