「可愛いですね、抱っこさせてもらえますか」
こう言って抱っこした赤ちゃんの足を次々と骨折させ、傷害罪で起訴された女の初公判が8月9日(2010年)、宇都宮地裁足利支部であった。
女は五月女裕子被告(27)。うすら笑いを浮かべて入廷した被告は、検察の冒頭陳述で赤ちゃんの足を骨折させた生々しい経緯が明らかになると、みるみる顔が赤くなっていったという。
冒頭陳述よると、五月女は今年5月26日、足利市内の子供用品店で生後2か月の男の赤ちゃんを抱いた家族を見つけ、「可愛いですね」と声をかけた。
赤ちゃんを抱かせてもらい、赤ちゃんに兄弟がいることを知り犯行を決意。赤ちゃんの尻、左足のすね、ふくらはぎを右手でつねったうえ、左足のひざ下を右手で強く握って、くの字に折り曲げて骨折させた。
五月女はこのあと、同じ店内で生後3か月の女の赤ちゃんの両足を骨折させた。
母子家庭の疎外感
五月女は動機について、「自分は離婚して、子供ひとりの母子家庭。幸せそうな家庭を見ると疎外感を感じた」からだと語っている。
こんな動機で赤ちゃんの足の骨をポキポキ折られてはたまったものではない。検察側が「殺してやりたい」「極刑にしてほしい」という被害者の親の思いを代わって述べたのもうなずける。
キャスターのテリー伊藤「自分に子供がいなくて、子供がいる家庭を嫉妬するならまだ何となく理屈になっているが、自分に子供がいるじゃないですか。自分の子供が逆の立場でやられたらどうなんだということを裁判ではっきり言ってほしいね」
取材したリポーターの阿部祐二によると、弁護士から「自分の子供がそういうふうにされたらどう思うか」と言われて、それまでの否認を一転、正直に語り始めたという。
想像できないほどの陰湿な嫉妬心で犯行を重ねた被告。わが子を思う親の気持ちがわずかに残っていたということか……。