【感涙戦評】大舞台の厚い壁に跳ね返された、初出場校のエース

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8/7 第1試合▽1回戦▽九州学院 14−1 松本工
九|332 400 020|14
松|000 001 000|1

    開幕試合の緊張感は瞬く間に消え去った。先攻の九州学院がいきなり3点を挙げて主導権を握り、さらに4回まで毎回得点を重ね、ここまで12点。一方の松本工は5回2死まで走者なしという好対照の展開とあって激突のない圧勝、惨敗の結果となった。

    九州学院の勝因は“無理のない試合運び”にあった。攻撃では「ボールは打たない」「甘いストライクは初球から打つ」「コースに逆らわず打ち返す」といった高校生に適した打撃を見せた。1回は1死から内野安打、3番のセーフティーバント、安打で満塁の好機を作り、富髙の左中間2塁打で走者を一掃。2回は渡辺の3塁打をきっかけに四球に単打を連ねて加点。4回の4点も集中打を浴びせて奪った。6人の左打者が中堅から左翼へ“自然”に弾き返したのは鮮やかとしかいいようがない。

    相手のエース柿田は、カウントを取りに行けば打たれ、追い込んでの変化球は警戒し過ぎてすっぽ抜けるという悪循環に陥った。一言でいえば「自分のピッチングをさせてもらえなかった」といったところだろう。それほど九州学院の攻めは理にかなったものだった。

基本に忠実な九州学院 今大会の有力校になるか

    九州学院のエース渡辺は、スリークォーター、サイドと投法を巧みに変え、投手にとって最も大事な「丁寧に投げる」ことを守った。それが素晴らしいコントロールを生み、追い込むと低めのストライクからボールになるスライダーなど変化球で打者をさばいた。外野へ打球がほとんど飛ばず、内野ゴロ、空振りの三振が多かった。2、3回に先頭打者にボール3としながらストライクを2球取り、いずれも内野ゴロに仕留めた投球は面目躍如といったところである。まるで“魔法使い”のような技巧だった。

    この戦い方をみると、九州学院はかなり有力校に挙げられるのではないか。基本が徹底されており、かつて総合力で2007年に全国制覇した佐賀北をほうふつさせる。

    夏春を通じて初出場の松本工は甲子園の厚い壁を感じ取ったことだろう。その象徴は嫌というほど撃ち込まれ、5回限りでマウンドを降りたエースである。柿田は長野予選を1人で投げ抜いた。それが大舞台でノックアウトを食ったのだから。

菅谷 齊




菅谷 齊(すがや・ひとし)プロフィール
1943年、東京生まれ。法政大学卒。法政二高硬式野球部時代に甲子園で夏春連覇(1960,61年)を経験。共同通信社ではプロ、アマ野球、大リーグを 主に担当。84年のロサンゼルス五輪特派員。プロ野球記者クラブ、野球殿堂入り選考の代表幹事を務める。野球技術書など著書多数。現在、日本記者クラブ会員(会報委員会委員)。

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