<インセプション>コブ(レオナルド・ディカプリオ)は他人の夢を通して潜在意識に侵入し、アイディアを盗み出す犯罪の世界のスペシャリスト。彼は言う。この世で一番価値のあるものは他人のアイディアだと。
そんなとき、コブの属するチームにサイトー(渡辺謙)から特別な依頼が舞い込む。他人のアイディアを盗むのではなく、違う意識を植え付ける(インセプション)、不可能といわれているミッションだった。離れ離れになっている子供たちの待つ家に帰すという条件で、コブは最後の仕事として依頼を引き受ける。
主演にレオナルド・ディカプリオ、助演男優に渡辺謙。監督は「ダーク・ナイト」のクリストファー・ノーランだ。
CGじゃない映像の迫力
「夢の中」の物語。ありがちなテーマだが、やはり天才クリストファー・ノーラン監督にかかると、その斬新な映像美にまず息を呑む。冒頭から何かを予感させる独特の青みがかかった世界。夢の世界では何でもありだ。街全体が箱のように折りたたまれ、ビル群は砂の城のようにもろく崩れ、時間はとてつもなく遅く流れて、人は無重力の中で動く。
しかし、「夢の中」にもさまざまなルールが存在し、それがシンプルな設定を複雑にしていく。コブの抱える壮絶な過去と、亡き妻モルの幻影がもたらす夢の意味はいったい何なのか。その謎解きにぐいぐいと引き込まれていく。
監督の世界観、練りこまれたストーリーが観客を魅了する。この作品を観る多くの人は、監督の前作の大ヒット作「ダーク・ナイト」と比較してしまうのではないだろうか。でも、絶対的な登場人物。つまりジョーカーのような存在は、この作品にはいない。
人々を惹きつける傑作と呼ばれる作品には、異質な人間の偏った思考や暴力的な行動が必要なのかもしれない。とくに、監督の緻密なストリーラインには、彼にも予想できない『人間の行動』が極上のスパイスになるのだと感じさせる。
今度はジョーカーがいない分、さまざまなキャラクターが活躍するチーム戦だ。あえてCGを多用せず、あそこまでの映像にするところはさすが。シックなスーツに身を包んだ登場人物たちが繰り広げるアクションシーンは、映画「マトリックス」や「ダーク・ナイト」を超えている。観客のテンションをずいずいと押し上げる重みのある音楽も健在だ。
観終わるまでに、映画の迫力に何度口が開けっ放しになったことだろう。映像というコンテンツをフルに生かしたアクションエンターテイメントだといえるだろう。
PEKO
おススメ度☆☆☆☆