クドカン・長瀬・磯山トリオ さすが「技あり」

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   <うぬぼれ刑事(TBS系金曜夜10時)>脚本・宮藤官九郎、主演・長瀬智也、プロデューサー・磯山晶のトリオは、5年前に「タイガー&ドラゴン」をヒットさせているだけに、楽しみに見ているけれど、期待を裏切りませんね。「うぬぼれ」とあだ名されている超恋愛体質の刑事が、犯人の女性に毎回恋心を抱き、逮捕状とともに婚姻届を突きつけて、これまた毎回フラれるという奇想天外な設定なのに、それをすんなり見せてしまうところに、クドカンの非凡さを感じます。テンポがあるし、音楽もなかなかよくて、今のテレビ界のドラマとしてはよくできている。

はじめから犯人わかっている刑事ドラマ

   主役は長瀬なのだけれど、もうひとりのキーパーソンは、たちまち惚れちゃう犯人役の女優陣でしょう。第1話は加藤あい、第2話は蒼井優、第3話は樋口可南子とそれぞれがらりと違うキャラクターになっていて、小泉今日子、戸田恵梨香、三田佳子、薬師丸ひろ子、女性ではないが女形が美しい歌舞伎役者の中村七之助も登場、「初恋編」「癒し系」「野心派」「地元流」など恋愛パターンに名前が付いているのも面白い。これだけの顔ぶれをそろえたプロデューサーの手腕は、さすがと言うほかありませんな。

   一歩間違えると、こういう豪華なキャスティングは失敗することが多い。主役も立てなければならない、スペシャルゲストも立てなくてはならないということなって、虻蜂取らずで終わってしまうからです。とりわけ、このドラマは彼女たちが登場したときから犯人だと分かっているわけです。犯人が最初から分かっている刑事ドラマなんて、普通に考えたらかなり難しいですよ。それをそうさせないのは、事件の核心というか、逮捕にこぎつけるまでのプロセスがしっかり作ってあって、説得力があるからでしょう。全体にコメディータッチなのに、この部分はきちんと謎解きになっているわけです。

   お笑いもセンスがいい。長瀬の父親役が西田敏行ならさもありなんですが、2人の掛け合いは私のような年寄りが笑えるものになっていて、このドラマが決して若い人向けに作っているわけではないことがよく分かる部分です。いやあ、クドカンはやっぱり何か持っている人ですね。

      変人の  力で壊せ  ドラマの常識

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