地上デジタル放送完全移行まで1年を切ったが、「南関東問題」で大混乱が起きている。ちょっと聞き慣れない言葉だが、要するに南関東エリアで地デジが見られない世帯が大量に出そうなのだ。
地デジ対応テレビが普及していないということではない。マンションなどで地デジ対応アンテナの設置が進んでいないのである。地デジを受信するためには魚のスケルトンのようなUHFアンテナが必要だが、南関東はNHKも民放もVHF帯でアナログ放送を送信してきたため、アンテナを交換しないと来年7月24日からテレビが映らなくなってしまう。他のエリアはアナログ放送の周波数にUHF帯が含まれているので、こうした問題は少ないという。
アンテナを付け替えればいいのだが、その費用がバカにならない。切り替え費用は端子の数によって数十万円から数百万円かかる。集合住宅ではこれを入居世帯で頭割りすることになるが、1世帯あたり数万円から十数万円になってしまうこともある。少ない負担ではないし、なかには「それだったらテレビはワンセグで見るからいい」という若い人も出てくるだろう。
東京、埼玉は未対応が半分以上
マンションやアパートで地デジ対応が済んでいるのは、東京49%、埼玉43%、神奈川59%、千葉57%。このままでは、埼玉は集合住宅の住民の半分以上が『地デジ難民』になってしまう。
これまで電波障害があって共同アンテナで電波を提供されていた一戸建てでも、新たなアンテナ設置が必要になるケースもある。
「地デジはアナログより電波障害の影響が少ないので、共同アンテナでカバーされなくなることもあります」(総務省)
個別にアンテナ切り替えをやると、工事費込みで2万5000円から6、7万円かかる。専門家からは完全移行を2、3年延期してはどうかという意見が出ているが、原口一博総務相は延期しない方針だ。延期になれば、アナログ併用でテレビ局の負担が年間5~6000万円になることも大きい。
全国平均では2割が地デジ未対応だが、カーナビゲーションなどを含めれば、映らなくなるテレビはもっとずっと多そうである。(テレビウォッチ編集部)