宮崎県で発生した口蹄疫で出されていた非常事態宣言が27日午前0時、71日ぶりに解除された。国との間でいろいろ摩擦もあった東国原知事も、「ひと息つけたかな。ただ、あと1か月ぐらいは息が抜けない状況です」とホッとした様子だ。
殺処分された家畜は、牛6万8000頭、豚22万頭、計8万8000頭近くに及び、損失額は1000億円(JA宮崎中央会発表)に達する。まだ口蹄疫に汚染された糞などが残っており、終息宣言が出るまでには1か月かかるという。
終息宣言はまだ
リポーターの大村正樹が現地の様子を伝えた。畜産農家は茫然自失の状態から抜け出て、ようやく元気を取り戻し始めたようだ。
種牛の殺処分に最後まで抵抗していた薦田長久さん(72)はこれを機に引退し、息子にバトンタッチするというが、種牛育成の夢捨てきれず、「またやりたい」と意欲を取り戻した。
再スタートにはまだまだ大きな問題が残されている。繁殖農家は雌牛を購入し、人工授精させて出産にこぎつけるまでに、人間と同じ約10か月かかる。さらに生まれた子牛を商品に育てるまでに7~10か月かかるから、2年間は収入ゼロの状態が続く。
酪農家は乳が出る乳牛を購入することも可能だが、価格が高い。このため、妊娠していない乳牛と雄の精子を購入するところからやり直し。出産から搾乳できるまでにやはり10か月はかかる。
これまで通りの収入を得るには、5年から8年かかると試算されている。
竹田圭吾(ニューズウイーク日本語版編集長)は次のように指摘した。
「国がかなり支援しないといけないが、それよりも気になるのは、これまでの経緯を見ていると、今後、同じことが起きた時に防げるのかということ。はなはだ心配ですよ。法律の整備が整っていないため、防疫の体制について、農家や県、国との間で非常にバタバタしましたが、その辺を急いでやっておかないと次に同じことが起きかねないと思いますね」
畜産県としての宮崎を再生していくためには、国の畜産農家への支援と同時に、今回の感染経路やここまで拡大した原因究明は欠かせない。