日本のイルカ漁を取り上げたドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」。3日から国内封切りとなったこの映画は、日本人を差別する反日映画だとかいう理由で、一部の団体などが上映を予定していた映画館に抗議活動などを行い、数館が上映中止に追い込まれている。
そんななか、予定通り公開を果たした横浜市の映画館を番組は取材していた。昔ながらの商店街のなかにある感じの、見たところこじんまりとした映画館だ。そこにも、公開予定を知った「市民団体」が街宣にやってきた。横断幕を広げ、拡声器を使って「○○は上映を中止しろー」とがなり立てる。○○は経営者(支配人)の名前である。
支配人の自宅に押しかけた「市民団体」
支配人は公開をやめるつもりはない。約2年前、やはり物議をかもした映画「靖国」のことが心にひっかかっていた。上映予定だったが、抗議を受けて中止した映画だ。「上映中止の声に屈した訳ですから、やっぱり恥ですよね。もう同じことを繰り返しちゃいけないと」
「抗議」に名を借りた嫌がらせのような行為には、対抗策を取った。裁判所に申請した結果、映画館から半径100メートル以内での大声、拡声器の演説を禁止する仮処分決定が出た。
すると、その2日後の朝方。「市民団体」は上映中止要請文を届けるとして、数人で自宅におしかけ、その「抗議」を自ら撮影してインターネットに掲載した。筆者が思うに、同じようなフレーズを拡声器でわめき散らすよりは、要点をまとめた文章を渡すほうが若干知的な感じはするが、なぜ問題の映画館ではなく、自宅を訪れる必要があったのだろうか。
当時、支配人はたまたま家に不在で、対応したのは高齢と思しき支配人の母親だった。男性が「あなたそれ考えたことあんの、母親として。よろしくないよ、これは!」などと、居丈高に上映反対の考えを説教する。朝の住宅街に横断幕を広げ、拡声器で「演説」し、近所の人が遠巻きに見守る。