「プロボノ」なる新しい動きが若者たちの間に広がっている。プロボノの語源はラテン語のプロボノ・パブリコで、意味は「公共善のために」。高いスキルを無償で提供する新たな社会貢献だ。国谷裕子キャスターによれば、もともとは弁護士、会計士などが月に数時間、無償で相談に応ずる形で始まったが、いまや銀行マン、デザイナー、システムエンジニアなど、専門の知識、技術を有する、さまざまな職種の人に拡大しているそうだ。
NPO法人のHPをリニューアル
番組はNPO法人「日本アレルギー友の会」支援に取り組むプロボノを紹介した。「友の会」は患者の悩み相談をしてきたが、会員数が伸び悩んでいた。見づらいホームページに原因があると考えてはいたが、改善のしかたがわからず、長い間そのままにしてきた。
このHPリニューアルのために、プロボノ希望者の支援団体に登録していた会員から選ばれたメンバーは、電機メーカーの営業マン、広告代理店のコピーライターら6人。彼らは、患者からの聞き取りを行い、チームで打ち合わせたうえで、プレゼンに臨む。営業マンは「患者同士の共感」をコンセプトの柱に据え、「悩みを共有し前向きに生きようというメッセージが多くの患者の心をつかむ」と訴える。コピーライターは「一緒に始めませんか アレルギー・コントロール」というキャッチコピーを提案する。
患者の1人は「サイトだけでなく、全体を支援していただいた気持ちがする。ありがとうございます」と頭を下げる。営業マンは「仕事では得られない確かな手ごたえ、自分そのものが評価された喜びを感じる」と話す。
米国では10億ドルの経済効果
国谷は「プロボノが広がる背景には、仕事のやりがいが見えにくい現実がある」と言い、スタジオゲストの田坂広志(多摩大学大学院教授)はこう解説した。
「かつては、働きがい、働く喜びという言葉が当たり前に使われた。ここ20年は、生き残り、勝ち残り、サバイバルだ。殺伐とした職場の文化が生まれている。プロボノは、若い人たちの、時代のあり方に対する無言の抗議の声だ」
一方では、プロボノに参加する社員が成功体験を獲得して自信を持ち、仕事へのモチベーションを高める場合も多いらしい。企業にはありがたいことである。企業によっては、人材育成を目的にプロボノ活動を拡大し始めているところもあるようだ。これについて田坂は、「そもそもは仕事の場で働く喜びを感じさせるべきで、外の動きで置き換えることはできない。プロボノを利用して社員のモチベーションを高めようとするのは筋が違う」と注意を喚起する。そして、企業とNPOが互いに影響を与えあって社会変革に取り組んで行く時代が始まるだろう、と期待を込めた。
アメリカでは政府が企業のプロボノ活動を奨励、大手企業がプロボノ支援を加速し、3年間で10億ドルを超す経済効果が見込まれているという。なにやら菅政権が政策課題に取り入れそうなトレンドではあるまいか。