無差別に11人を車ではねて殺傷。22日に広島市内のマツダ工場で起きた事件は、東京・秋葉原の大量殺傷事件を思い起こさせる。
事件はマツダ宇品工場の敷地内で起きた。出勤時間帯の午前7時半すぎ、警備員の制止を振り切って車が工場敷地内に侵入、歩いていた人を次々に襲い、1人が死亡10人が負傷した。
この間わずか8分足らず、車は別の門から逃走した。敷地内にはこの車のブレーキ痕は一つもなかったというから、人を襲うために侵入した計画的な犯行なのだろう。
腹がたってやった
「わしがやった。腹がたってやった。畑賀峠におるけ来い」
逃走から15分後、犯人から警察に110番通報があった。工場から5キロ離れた山中に警察が駆けつけると、ボンネットが大きく凹み、フロントガラスが割れたマツダ「ファミリア」が駐車しており、車内から刃渡り18センチの包丁が見つかった。運転席にいた男を殺人未遂、銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕した。
男はマツダの元期間従業員、引寺利明容疑者(42)=広島市安佐南区。これまでの調べに対し、引寺は「マツダを2か月前にクビになり恨みがあった。精神的にムシャクシャして人をはねた。殺すつもりだった」と自供しているという。
マツダの説明によると、今年3月下旬に期間従業員として採用、6か月の契約で4月1日から勤務したが、本人が「一身上の都合により退職したい」と願い出て、同月14日に退社したという。
この2週間の間に有給休暇を2日間取っており、働いたのは実質8日間。マツダは「誰かとトラブルがあったとか、異常などの事象は見受けられなかった」と説明している。
死亡したのはマツダの男性社員(39)。妻と生後10か月の娘と3人暮らし。突然の訃報に妻は「夫が突然このような事件にあい、大変ショックで言葉もありません」と茫然自失だ。 なぜ、無差別に11人も死傷させたのか、わずか8日間の勤務にどんな揉め事があったというのか、犯行に及んだのが2か月後というのも解せない。