「まさかこんなに少数派でのスタートとは」
番組の小さな国会にやって来た俳優のえなりかずきは苦笑した。「日本が経済で中国に抜かれたら、政治家全員丸刈りにします 」というマニフェストを掲げたが、本会議をはじめるにあたり、賛成派はえなり含めて5名(反対12名)しかいなかったのだ。
抜かれたら政治家全員丸刈りにします
「中国に負けたくない!」(番組キャプション)と意気込むえなりは、西から日が出る勢いの大国に対抗心と恐怖心をにじませた。GDPやら金持ちの人数やなんやかやの指標で、日本の国際的な地位が下がってることを嘆き、近い将来「中国に日本の技術を真似されて、優位性が吹っ飛ぶ」ことを恐れる。
さらに、えなりにとって腹立たしいことには、こんな危機的状況でも政治家連中は無策なのだ。「民主党のマニフェストにも、海外にどう日本をアピールしていくかという話がない」と、えなりは嘆息する。GDPで中国に抜かれるのは時間の問題だが、それなら政治家にはせめて丸刈りになって責任を取ってほしいというのだ。
「中国経済が伸びれば、日本も(つられて)伸びる」(民主党議員・生方幸夫)、「国民幸福度指数とか、男女が子育てをしやすい社会とか、GDP以外の尺度も考えるべき」(民主党議員・柚木道義)といった反論は、えなりには敗軍の将の遠吠えにしか聞こえない。「それは競争に負けそうになると言う言葉であって…」と、えなり・アズ・ナンバーワンは口を尖らせる。
「あんなに人がいたらしょうがねーじゃん」
一方、えなりと同じ芸能人でも、お笑いタレントカンニング竹山の考え方は、柔軟というか即物的で現金である。
「結局、中国にやられるのが怖いって話でしょ? (中国に)あんなに人がいたらしょうがねーじゃん、ってのもあるし」
「中国に負けてもしょうがない、と?」
不服そうなえなりに、「どうせ喰われるんだから、方向性を変えて中国とうまくやっていくようにしないと」と竹山は言う。しかし、「脇役」に甘んじて生きていくニッポンなど、えなりには容認できないかもだ。
えなりの父親ほど(あるいはそれ以上)の歳の俳優、秋野太作は、自分と日本を重ね合わせて考える。
「日本は僕、中国はえなりくん。(えなりくんは)これから伸び盛りなんだよ。僕みたいなのが成熟しちゃって、『さて、これからどうしようか』ってのが日本だから」
「競争してるからには、世界一を目指しますよ」
国会も終盤戦に入ると、中国にも比される日の出の俳優はあらためて力強く宣言し、敗北主義を退けた。ハタから見てるとなかなか気づかないが、えなりは大いなる情熱を秘めた男だったのだ。今夜のえなりは、少なくともあのドラマの役などから受ける印象よりは、はるかに力強く、血気盛んな有為の愛国青年に見えた。それにしても、えなりが自分の職業の競争において、どんな世界一を目指しているのかは、依然として見当もつかないナゾではある。
ボンド柳生
*太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中(日本テレビ系)