「しんどいから殺してくれと頼まれて頭から袋をかぶせて殺した」
44歳の父親を手にかけた17歳の塗装工の少年は、そう供述しているという。6月12日、大阪・鶴見区のマンションで嘱託殺人事件が起きた。
「最小不幸社会」は手を差しのべられるか
かつてキックボクシングをやっていた父親は、母親とスナックを経営、かなり繁盛していた。しかし、2年前、母親が病死して状況は一変する。父親は肝臓が悪いのに深酒を続け、心身ともに変調をきたして外出もできなくなった。
少年は中卒後に塗装工になり、献身的に世話をしたらしい。ここひと月、体調が急速に悪化して苦しむ父親を、息子は見ていられなかった。
阿部祐二リポーターによると、小学生のころキックボクシングの世界チャンピオンになることを夢見ていた少年は、厳格な父親を尊敬し、「絶対的服従関係」にあったという。
コメンテーターの勝谷誠彦(コラムニスト)は、「菅新総理は『最小不幸社会』と言った。こういう困っている人たちを見つけて助けることこそが、われわれの仕事だ。行政が入って、父親をあずかると言ってあげれば何も起きなかった。メディアも社会もていねいに見ていかねばならない」とした。
テリー伊藤はこう語る。
「母親の死に対し、父親に罪の意識があったことが大前提。店もたたんでしまう。その父の苦しんでいる姿を見て、自分も苦しくなる。解決できるのは自分しかいないと強い意志を持ってしまう。それに耐えきれなくなったのではないか」
阿部の説明では、嘱託殺人罪は「6か月以上7年以下の懲役または禁錮」とのこと。専門家によれば、執行猶予がつく可能性があるそうだ。
勝谷が「罪は罪として、少年は社会にちゃんと帰ってきてほしい」と述べた。
17歳の少年が1人で抱えるには重すぎる負担だったに違いない。
文
アレマ| 似顔絵 池田マコト