松尾スズキの「赤塚マンガ大好き」はわかったけれど…熱く語るだけじゃ半端人物伝

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<こだわり人物伝(NHK教育水曜夜)>以前は「わたしのこだわり人物伝」というタイトルだったことでもわかるとおり、各界のゲストが思い入れの強い著名人について、その魅力や自分がどんな影響を受けたかを4回シリーズで語る番組だ。6月は作家、演出家、脚本家、俳優と多彩な才能を見せる松尾スズキが漫画家・赤塚不二夫について語っている。

   しかし、こういう番組は非常にむずかしい。まず、語られる人物に興味・関心がなければ、はじめからチャンネルを合わせてもらえないし、たとえ興味・関心があっても、それを語る人の評価や視点がちょっとでも違うなと感じると、なまじ好印象を持っている人物についての話だけに、見ている側は「ぜんぜんわかってない!」と反発を感じてしまうのだ。また、ゲストの話すエピソードや時代背景に、見ている側と大きなギャップがあると、これまた違和感が大きくなって見続けるのがつらくなってしまう。赤塚不二夫の回が私にとってそうだった。

イヤミ、チビ太ら脇役キャラクターの魅力には同感

   6月2日は第1回目だったので、赤塚が満州から引き揚げ、奈良の大和郡山から漫画家を目指して東京に出て、漫画人のたまり場だった南長崎の「トキワ荘」で石ノ森章太郎の弟子として頭角を現すところまでの話だった。

   一方、松尾は少年時代を過ごした北九州市で赤塚マンガにのめり込んでいった「自分の歴史」を熱く語る。松尾は「ニャロメの絵描けます」と実際に描いて見せたりするのだ。松尾が熱烈な赤松マンガのファンであることはわかったが、どこにどうこだわっているのかが伝わってこない。たとえば、「トキワ荘」での貧しい暮らしぶりについて語っても、47歳の松尾には当時の売れない漫画家の悲惨さは感覚としてわからないだろうから、イメージやつかまえどころが違ってしまうのだ。

   ただ、松尾に共感できるところも少なくなかった。松尾は赤塚のマンガは主役よりも、脇役のキャラクターが生き生きと描かれていて、そこが魅力だという。「おそ松くん」のイヤミ、チビ太、ニャロメ、ハタ坊たちだ。そして、これらのキャラクターが今でも十分通用するのが、赤塚マンガのすごいところというのは、まったく同感である。でも、番組としては、ボク的にはちょっと中途半端という印象しか持てなかった。

      おそ松も ニャロメイヤミも 不滅なり

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