「へー、いい話ですねえ」と赤江珠緒キャスターに大好評だったのは、いささか古めかしい「ブッチホン」にまつわる秘話だ。ブッチホンは元首相の小渕恵三の「渕」(ぶち)とプッシュフォンの「フォン」を掛け合わせた造語だ。「政治家と電話」というテーマでお届けした今回の「週刊永田町トリビア」コーナーで、当時の官房副長官だった鈴木宗男の回想に基づき、紹介されたものである。
官房長官の諫言
誰彼構わずやたらと電話をかけまくる小渕首相に、野中官房長官は首相の立場を考え、相手を厳選するようにと諫言した。と、小渕は珍しく色をなして「あんたの親切はわかる。しかし俺はこの電話で中曽根、福田と伍してきた。小渕恵三から電話を取ったら小渕でなくなる」と反論したという。
地道な電話活動が自分の選挙を支え、ソーリにまで育ててくれたという信念がそこにはあったんだそうな。野中は「それだけの心構えでお電話されているのなら、私ごときが心配する話ではありません」と深々と頭を下げた。
その後、2人の関係を心配する鈴木に、小渕は「総理大臣においしい話はいらない。イヤな話を持ってくるのが、君らの役割だ。その意味で、さっきの官房長官の話はいい話だ。鈴木副長官も心してな」と穏やかに語り、懐の深いところを見せたそうな。
コメンテイターの森永卓郎獨協大教授は「オブチさんが亡くならなかったら長期政権になって、日本はもっと良くなっていたかも」と、首相在任中に病に倒れた故人を惜しんでいた。
文
ボンド柳生| 似顔絵 池田マコト