農家が直接国に通報し直ちに補償査定
口蹄疫はこの10年アジア全域に及んで、台湾、中国、韓国も発生国だ。専門家は「いつ日本で大量発生してもおかしくない状況にあった」という。にもかかわらず、農水省は危機管理ができていなかった。
2001年に世界最悪の感染があったイギリスも、初動が遅れた。農家からの通報が遅れ、地方と国との連携もうまくいかず、結果1645万頭もが処分され、被害は1兆4000億円にのぼった。
これでイギリスは対策システムをつくった。口蹄疫は「国家の危機」と位置づけて国が直接やる。周辺国での発生も警戒。農家は直接、国に通報する。環境・食料・農村地域省(DEFRA)が統括し、発生と同時に首相のもとに中央危機管理委員会が作られる。テロ対策と同じ態勢だ。
これが、07年の発生時に生きた。午後5時に農家から「1頭がおかしい」と一報。翌午前6時に獣医師が検診、2時間後に検体分析。正午の口蹄疫確定と同時に、全国の家畜の移動禁止。並行して処分が開始され、発見から1日で、この農場の牛60頭全部が処分された。
この時は、周辺の農場の感染していない牛なども処分されている。これを可能にしたのが補償制度だ。査定の専門家を置き、費用は全額国がみている。補償がないと、完全な封じ込めはできない。
NHK科学文化部の松永道隆記者は、「今回は特別措置法で補償をみたが、確たるシステム構築のためにも、宮崎のケースを十分に検証する必要がある」という。
人のやることには必ず抜け落ちがある。マニュアルやシステムが必要なのはそのためだ。今回の教訓をしっかりと生かしてほしい。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2010年6月7日放送「検証・口てい疫」)